2019年11月14日

【企業法務】中小企業も2023年から。60時間超の時間外労働が50%以上割増に

時間外労働と割増賃金

使用者は労働者に対し,休憩時間を除いて,1日については8時間,1週間については40時間を超えて労働させてはならないとされています(労働基準法32条)。

もっとも,労働基準法36条の協定(いわゆる「36協定」)を締結し,これを労基署に届け出れば,協定で定めたところに従い,労働時間を延長したり,休日に労働させることができます。

そして,1日8時間以上労働させた場合には,労働者に対し,労働基準法で定められた割増賃金を支払わなければなりません(休日や深夜に労働させた場合にも,割増賃金を支払わなければなりませんが,それについての解説は割愛します)。

1日8時間以上労働させた場合,1日8時間を超えた時間について,基本給の25%以上の割増賃金を支払わなければならないと定められています(労働基準法37条1項)。

月60時間以上の時間外労働があった場合の割増賃金

1日8時間を超えて労働させた時間が月60時間を超えた場合,月60時間を超えた時間については,基本給の50%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条1項但し書き)。
これは,平成20年の労働基準法改正(平成22年4月1日施行)によって導入された規制です。

もっとも,月60時間以上の時間外労働に関する割増賃金の規定は,中小企業については,当分の間,適用しないという猶予規定が設けられていました(改正前労働基準法138条)。
中小企業の定義については,こちらをご参照下さい。

改正の内容

今回の働き方改革関連法により,月60時間以上の時間外労働があった場合の割増賃金率の猶予に関する条文は削除され,令和5年(2023年)4月1日から,中小企業についても,上記の割増率の規定(月60時間以上の時間外労働があった場合,月60時間を超えた時間について,基本給の50%以上の割増賃金を支払うという規定)が適用されることになりました。

まとめ

 令和5年(2023年)4月1日からは,中小企業も,月60時間以上の時間外労働があった場合には,月60時間を超える部分について,基本給の50%以上の割増賃金を支払う必要があります。 

中小企業を経営される皆さんは,中小企業にも割増賃金率の規定が適用されるようになることを踏まえて, 労務管理を適切に行うとともに,法律に従った割増賃金の支払いをされるよう,ご留意下さい。 

執筆者プロフィール
弁護士紹介|臼井 元規弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。

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