2019年01月15日

36協定とは① 基礎知識と限度時間について

1 36協定の重要性

労働基準法は、使用者は、労働者に対し、休憩時間を除いて、1週間では40時間を超えて労働させてはならず、1日については8時間を超えて労働させてはならない、と定めています(32条)。
これを超えて働かせた場合には、6か月以下の懲役刑か30万円以下の罰金刑に処罰されることになっています。

その例外として定められているのが、労働基準法36条の協定(いわゆる「36(さぶろく)協定」)です。
この36協定を結んでおけば、使用者は、上記の時間を超えて働かせても処罰されないことになっているのです。

では、36協定とは何か、今から説明します。

2 36協定とは

これは、労使協定の1つです。
労使協定とは、使用者と労働者の集まり(過半数の労働者で組織する組合があればその労働組合、それがない場合は、労働者の過半数を代表する者)との文書による取り決めのことです。

この労使協定で、1日8時間を超えて働かせることができる、1週間で40時間を超えて働かせることができる、という合意文書を取り交わした場合、労働基準法の規制を超えて働かせることができるようになるのです。

では、この労使協定さえ結べば、どんな長時間労働でもさせることができるのか、が次に問題となります。

3 36協定は法令条文上は青天井

これについて、これまで36協定は、青天井と言われ、極端な話、どれだけ働かせても、形だけでも結んでおけばよい、ということになっておりました(ただし、残業させた時間分の割増賃金は必要ですが)。

これによって、過労死が大きな社会問題となり、今年夏に成立した働き方改革につながっているのです(この内容については、施行は平成31年4月以後のことですし、次回以後に説明します)。

4 残業時間と過労死基準

36協定は青天井、とは言っても、長時間労働は労働者の健康を害する、ということが最近問題になっております。

現に、過労による脳疾患や心臓疾患により病気になったり死亡したりする事例が増えています。
また、長時間労働により鬱病等にかかって、自殺に追い込まれる例なども、しばしば大きくマスコミに取り上げられております。
過労自殺の事案では、某大手広告代理店の若手社員が、長時間労働を主な原因として過労となり自殺した事案などは、ご記憶の方も多いでしょう。

そこで厚生労働省では、その対策として、いわゆる過労死基準を設けました。
その基準を超えて労働させて、脳出血等の脳血管疾患や心筋梗塞等の虚血性心疾患(その詳細は下記※参照)になった場合には、原則として労災認定する、というものです。

※ 対象となる疾病
ア 脳血管疾患
脳出血・くも膜下出血・脳梗塞・高血圧性脳症

イ 虚血性心疾患等
心筋梗塞・狭心症・心停止(心臓性突然死含む)・解離性大動脈瘤

5 労災と残業時間の目安

では、どのような場合に、いわゆる過労死基準を超えるのか。

簡単に言うと、現実に上記の疾患が生じた場合のうち、
ア 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりの残業時間が45時間以下の場合は労災との関連性は低い
イ 1か月の残業時間が45時間を超えて、長くなればなるほど労災との関連性が強まる
ウ 発症前の1か月間に残業時間が100時間を超えている場合は労災との関連性が強い
エ 発症前の2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりの残業時間が80時間を超えている場合も労災との関連性が強い
ということになっております

(詳しくは厚生労働省のホームページを参照して下さい)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf

ですから、なるべく残業させないのが一番ですが、仮に残業させたとしても、1月の残業時間は45時間以下とすべきです。
当然、36協定でも、月間の残業時間は45時間以下とすべきです。

では、かかる36協定を結べば、どんな場合でも残業させることができるのか、適用除外がないのか。これについては、次回に譲ります。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 小堀秀行 >>プロフィール詳細
30年以上に渡って,企業からの様々な相談を受けている。
顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。

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