2018年07月25日

「債権法」の改正

1 「民法」とは何か

「民法」という法律があることは,ご存知の方が多いと思います。

民法とは,私達の生活全般に関わる様々な場面について,基本的なルールを定めた法律です。
例えば,所有関係のルール,取引関係のルール,婚姻や離婚・相続などの家族関係のルールなどが定められており,
私たちの日常生活や経済活動と密接に関わるのが民法という法律なのです。

民法は,明治31年(1898年)に制定されました。
その後,昭和22年(1947年)に家族法と言われる分野(親族関係や相続関係などが規定された分野)の大改正が行われました。
また,平成16年(2004年)には,古風な文体が現代語化される改正が行われました。

ちなみに,平成16年の改正前は,漢字と片仮名で書かれていた上に明治時代の文語体であったため,現代人には非常に読みにくいものでした。

2 民法「債権法」の改正

一方,取引の基本的なルールなどが規定された債権法と言われる分野については,
明治時代の民法制定以来,内容面で大きな改正が行われることはありませんでした。

しかし,民法制定から100年以上が経過し,時代の変遷と共に私たちの生活様式も大きく変わり,
社会や経済の構造も大きく変わりました。
このような時代の変化に伴い,明治時代に定められた取引のルールでは,十分に対応できない点も見られるようになり,
債権法の分野も時代の変化に対応させる必要が生じました。

また,民法制定から今日までの間に多くの判例が出され,民法に直接規定されず判例によって形成されたルールもあります。

さらに,条文に書かれておらず解釈によって認められるルールも出てきました。

民法は私達の生活と密接に関わる基本的な法律ですから,私たちにとって分かりやすい法律にする必要があり,
判例や解釈によって認められてきたルールも,条文に規定する必要があるのではないという議論が高まっていきました。

そして,債権法改正の必要性の議論が進み,平成29年5月26日,債権法分野の規定を改正する法律案が可決しました。
改正民法は,公布日(平成29年6月2日)から3年以内に施行されます。

3 改正点の例

今回の民法(債権法)改正により,多くの規定が変わることになりますが,
私たちの日常生活や経済活動に関わる改正としては,例えば債務の保証に関するものがあります。

今回の改正により,事業資金の貸付金債務の保証をする場合,
原則として公正証書で保証の意思表示をしなければならず,かつ主債務者(お金を借りた人)は保証人になろうとする人に対して,
自身の財産の内容等の情報を提供しなければならなくなります。

このニュースレターでは,次回以降,皆さんの活動に関わりの深い点を中心に,
民法の改正点について,順次解説していきたいと思います。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 森岡真一 >>プロフィール詳細
交通事故と企業法務に注力している。
交通事故は,年間相談件数104件(受任件数75件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
後遺障害の等級アップについても、多数の実績を持つ。
企業法務分野に取り組む際には、『経営者のパートナーとして会社を良くしていく』という姿勢を一貫しており、企業の『考え方』を共有し、寄り添うことを大切にしている。

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