2018年11月27日

民法改正(事例)変動利率

【事例】

Aは友人であるBに対し,返済期限を2年後として,
利息の定めなく,100万円を貸付けました。

返済期限が過ぎましたが,
Bが「もう少し待ってほしい」と言うので,
Aはしばらく待つことにしました。

しかし,2年経ってもBは支払おうとしないので,
AはBに対し,元金100万円と,
返済期に遅れた損害賠償を,
併せて請求することにしました。

 

○現行法では

現在の民法では,法定利率を年5%と定めており,
事例のように,返済期限に遅れた損害の賠償の額は,
合意がない限り,法定利率によることとされています。

今回の事例では,
返済期限を経過し遅滞となった時点から,請求した日まで,
合計2年間返済が遅れており,遅延損害金は
100万円 × 5% × 2年間 = 10万円
となりますので,
元金と合わせて110万円を請求できます。
ちなみに,会社の業務などの場合,
商法が適用されますので,
年6%の法定利率で遅延損害金が計算されます。

 

○改正による変更

現在の民法は,
約120年前の明治時代に制定されたもので,
5%の法定利率も,
その当時の市場金利をもとに設定されたものです。
そのため,現在の市場金利とかけ離れているとの批判がありました。

そこで,今回の改正で,
まず,商法の年6%の法定利率は廃止となりました。
民法上の法定利率は,
ひとまず年3%とし,3年ごとに市場金利を考慮して,
1%単位で法定利率を変更させる,
変動制が導入されました(改正404条)。

ただし,個別の事件では,
年数が経つと利率が変わるのでは混乱するので,
債務が遅滞となった時点で法定利率が適用され,
その後その事件で適用される法定利率は
変更されないものとされました(改正419条)。

今回のケースでは,
貸付日の時点での法定利率を年3%だとしますと,
AがBに対し支払いを請求した,
貸付日から4年後の時点では,
法定利率が変動している可能性があります。

しかし,損害賠償の利率は,
遅滞の責任を負った時点で固定されますから,
返済期限を経過した,
貸付日から2年後の時点の法定利率で計算することになります。
この時点では,法定利
率の見直しがまだされていませんので,
年3%の法定利率で,請求時までの全期間を計算することになります。

そのため,損害賠償の額は,
100万円 × 3% × 2年間 = 6万円
となりますので,元金も併せて,106万円を請求できます。

今後は,法定利率が現在よりも低くなる上,
今回のケースのように,
支払期限によって利率が変わる可能性があります。
迷ったときは気軽にご相談ください。


執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 小堀秀行 >>プロフィール詳細
30年以上に渡って,企業からの様々な相談を受けている。
顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。

関連記事