趣 旨

1 はじめに

弁護士や裁判が、社会から嫌われています。それは司法統計に如実に表れています。

グラフ

このグラフは,平成3年から平成26年までの全国の地方裁判所の新受件数(民事・行政事件)と弁護士人口を表したものです。新受事件数は増加を続けていましたが,平成15年にピークを迎えた後,減り続けています。過払い事件のピークは平成21年ですが,減少傾向の大きな流れにはほとんど影響を与えていません。平成26年の新受件数は平成3年の数を下回っています。それに対し,弁護士人口は増え続けています。

弁護士会では、法曹人口問題ばかり議論されていますが、司法試験の合格者が1000人になったとしても今後30年間、弁護士人口は増え続けます。問題とすべきは事件数の大幅減少であり、我々はもっと深刻に受け止め、対策を講じなければなりません。

平成32年までに車の自動運転が始まりますが、やがて交通事故はゼロとなり、われわれ弁護士の出番はなくなります。また、来るIOT(Internet of Things)の時代は、弁護士不要社会とも言えます。家賃の滞納が続くと自動的に玄関の鍵が開かなくなるマンションはすでにできており、今後、このような仕組みは広がっていくでしょう。世の中は確実に、弁護士を嫌い、裁判を避けようとしています。それはなぜでしょうか。

多くの人は「裁判するために弁護士を頼むと金がかかる。また、裁判には時間がかかる。裁判になると、相手を攻撃し、相手からも反撃を受け、精神的に大変辛い思いをしなければならない。」と考えています。①経済的な負担、②時間的な負担、③精神的な負担という三重苦により、裁判のイメージは相当に暗いものです。それでも裁判をしようと思うのは、よほど我慢ならない事態が生じて苦しんでいる人であり、そこまで至らない人は、別の解決を考えます。この暗いイメージを変えないと弁護士への依頼は減っていく一方です。

2 経済的な負担

弁護士に依頼すると金がかかるという点については、弁護士保険制度や法テラスにより、かなり改善されてきました。また、特定の分野について相談料無料、着手金無料としている弁護士も増えてきています。その意味で、経済的負担というアクセス障害は取り除かれようとしています。

3 時間的な負担

問題は、裁判に時間がかかるという点です。争いのある事件では、判決まで平均1年間を要します。このことを話すと多くの企業経営者はあきれます。これほど動きが速い時代に、1年間も待っておれないのでしょう。

1年間といっても期日としては10回もありません。期日と期日の間隔が空きすぎているのです。裁判官から書面をいつ提出できるか聞かれた際、ほとんどの弁護士は「1ヶ月」と答えます。しかし、書面作成に1ヶ月もかかることはありません。普通の書面であれば長くても数時間でしょう。すぐに書き始めればよいのに、一旦記録をロッカーに仕舞い込んでしまうことが多く、大変に非効率です。また、「他の事件の準備もあるから」という声もありますが、他の事件もすべて前倒しで書面を作成してしまえば解決するはずです。打ち合わせが必要な場合もありますが、受任時に詳しく事情を聞いておけば、電話で確認すれば済む場合が多いと思います。

そもそも弁護士が作る書面は、「重厚長大」に過ぎます。事件によってはそのような書面も必要でしょうが、通常の事件ではコンパクトな書面が適切です。そもそも、裁判官も長い書面は好みません。弁護士は相手方の書面に漏れなく反論しないと気が済まないという人が多く、争点から外れているところも、一生懸命に反論します。それに対して相手が更に反論したりして、争点と外れたところに議論が集中したりもします。相手の書面にすべて反論する必要はないので、自分が設定した土俵で、必要最小限の認否反論を行うようにすれば、書面は相当短くなります。

超スピード社会の現代では、訴訟のスピード化も避けられません。一部の重厚長大な事件を除き、弁護士の書面は短くして速く提出すべきです。私の経験では、2週間あれば十分だと思います。多くの弁護士が2週間で書面を提出するようになれば、裁判は今よりもずっと早く終わることになります。

4 精神的な負担

互いに攻撃し合うことによる精神的な苦痛という点はどうでしょうか。裁判では「請求の趣旨」を実現するために、あるいはこれを退けるために、最大限に主張・立証するというのが一般的な弁護士と思われます。それは正しいと思いますが、準備書面や尋問の際、相手方を見下して、その人格を否定するようなことはなされていないでしょうか。依頼者は一時的には溜飲を下げるでしょうが、相手方からも同様の攻撃がなされ、さらに反撃するということを繰り返すうちに、依頼者は精神的に参ってしまい、また依頼者と相手方との人間関係も完全に破綻してしまいます。

そもそも紛争とは、ほとんどが親族や友人・知人、取引先などとの間で起こるものです。今後も、長い間、つきあって行かねばならない場合が多いのです。相手を攻撃して良い気分になったとしても、それは一時的な満足に過ぎません。紛争の当初は感情的になっていますから、弁護士に対して徹底的に相手を攻撃してほしいと求める依頼者もあります。しかし、そんな感情は長続きしません。本当は、どんな人も円満な解決を望んでいるはずです。弁護士はこのことを忘れてはなりません。何らかの行き違いによって紛争になってしまったのですが、これ以上お互いが傷つかないように、また、傷つけ合わないように、弁護士がプロとして調整役を果たす必要があると思います。裁判になれば、相手に不都合な事実も主張しなければなりませんが、節度をわきまえ、相手の立場も尊重した上で、言うべきことを漏れなく主張するのであり、不必要に攻撃することはありません。そして、可能な限り話し合いの解決を目指すのが弁護士のあるべき姿です。できれば、最後に、互いが笑顔で握手を交わせるような解決が理想であり、そうなれば、裁判に対する暗いイメージがかなり変わると思います。

5 迅速で円満な解決を目指す弁護士の会

昔のメーカーは、作ったものを売っていました。今日では、そんな会社はありません。お客さんがほしいもの、買いたいものを作るのがメーカーです。「顧客志向」とも言われます。われわれも、これまでの弁護士村・裁判村の常識と決別し、国民が買いたいと思うサービスを作らなければなりません。
以上のような考え方に基づいて「迅速で円満な解決を目指す弁護士の会」を設立することにしました。
会に登録した弁護士は,複雑・困難な事件を除き,準備書面を原則として2週間以内に提出します。
そして,必要な争点に対し必要な主張をします。相手方の立場も尊重し,必要もなく過度に攻撃したりはしません。

登録を希望する弁護士は、申込書をFAX送信し、年会費1万円を納めて下さい。入金確認後に登録を行い、1週間以内にHPで公開します。

 

平成27年1月
迅速で円満な解決を目指す弁護士の会
代表 小 堀 秀 行