2021年01月19日

株主総会議事録についてー書き方,記載事項,保管期間など

1 はじめに


取締役や監査役の選任,取締役等の報酬の決定,退職慰労金の決定,事業譲渡や合併,解散など会社の重要な意思決定は株主総会で行われることとされています。

ところが,株主総会を開かずに,株主総会議事録だけを司法書士や税理士などに作ってもらっている中小企業が少なくありません。

株主総会を開くことは非常に重要なことです。株主総会を開催することの意義や重要性については,こちらの記事で解説しておりますので,御覧下さい。

株主総会の意義と重要性

では,株主総会を開催したら,何をすればよいのでしょうか。
株主総会を開催した場合,株主総会議事録を作成することが法律で義務付けられています(会社法318条)。

そこで,今回は,株主総会議事録にはどのようなことを書けばよいのか,株主総会議事録を作成する際に注意すべきことは何かなど,解説したいと思います。

2 株主総会議事録の記載事項


株主総会議事録には,次の事項を記載する必要があるとされています(会社法施行規則72条3項)。

① 株主総会が開催された日時及び場所
② 株主総会の議事の経過の要領及びその結果 ※1
③ 会社法の規定に基づいて株主総会において述べられた意見又は発言があるときは,その意見又は発言の内容の概要 ※2
④ 株主総会に出席した取締役,執行役,会計参与,監査役又は会計監査人の氏名又は名称
⑤ 株主総会の議長があるときは,議長の氏名
⑥ 議事録を作成した取締役の氏名

※1
株主総会における合議の経過や内容のことで,審議の過程で発せられた質問及びそれに対する回答内容,提出された動議,決議事項についての採決の結果などを指します。
具体的な記載方法は,速記録のように発言内容をそのまま記載する必要はなく,議事の経過が分かる程度に要点を記載すれば足ります。

※2
監査役から監査役の報酬に関する意見が述べられた場合など,会社法の一定の規定に基づいて意見が述べられたときは,その意見の内容の概要を記載する必要があります。

議事録作成者の署名は必要とされていませんが(昔の法律では,作成者の署名が義務付けられていました),議事録を作成した取締役の氏名は,記載する必要があります。

3 株主総会議事録の形式


株主総会議事録の形式については,特に規定はありません。
一般的には,複数の紙片に渡るときは,袋綴じを行い綴目には契印を押すなどすることが多いようですが,このような形式を取らなくても法的には問題ありません。

4 株主総会議事録の作成時期


株主総会議事録の作成時期についても,特に規定はありません。
もっとも,会社は,合理的期間内に株主総会議事録を作成する必要があると考えられており,総会の日から概ね1週間程度以内で作成するのが良いと思います。

なお,商業登記の変更の申請が2週間以内とされているため(会社法915条1項),登記申請に株主総会議事録を使用する場合は,これに間に合うように作成する必要がありますので,ご注意下さい。

5 株主総会議事録作成の際の注意点


(1) 採決結果の記載方法
採決の結果の記載方法については,「満場一致で承認可決された」,「賛成多数をもって可決された」,「圧倒的多数をもって可決された」といった書き方があります。

もっとも,例えば定款変更の議案のように,特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要)として要件が加重されている場合には,単に「賛成多数」と記載するのではなく,「3分の2以上の賛成をもって可決」などとして,決議要件を満たしたことを明確に記載する必要があります。

このように,特別に要件が加重された決議が行なわれた場合などには,採決結果の記載方法に留意しなければなりません。

(2) 個々の株主の賛否の記載方法
株主総会議事録には,基本的に,個々の株主の議案の賛否を記載する必要はありません(多くの場合は「賛成多数で可決した」といった記載で足ります)。

もっとも,例えば,株式譲渡制限規定を盛り込むための定款変更議案など,議案に反対することが株主の後の権利行使(この場合は株式買取請求権)の行使の要件となる場合があり,このような場合には,議案に反対した株主の氏名を議事録に記載しておく必要があります。

6 株主総会議事録の保管期間


株主総会議事録は,株主総会の日から10年間,本店に備え置かなければなりません(会社法318条3項)。
また,会社に支店がある場合には,議事録の写しを5年間,支店に備え置かなければなりません(会社法318条3項)。

株主や会社の債権者は,会社の営業時間内は,いつでも,株主総会議事録の写しを閲覧又は謄写することを請求することができますので(会社法318条4項),株主や債権者から株主総会議事録の閲覧・謄写を求められた場合には,会社はそれに応じる必要があります。

7 おわりに


株主総会議事録について,解説してきました。
株主が少数しかない会社の場合などには,株主総会議事録の作成を省略されることがあるかもしれません。

しかしながら,株主総会議事録は,法律で作成が義務付けられているものですし(会社法318条),後で株主総会の議事内容が争われた場合には,議事内容を証明する手段になります。

法令を遵守するという意味でも,紛争予防や紛争になった場合の備えという意味でも,株主総会議事録を作成することは重要です。

このコラムもご参考になされて,株主総会議事録の作成を励行して頂きたいと思います。



執筆者プロフィール
弁護士紹介|臼井 元規弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。
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