【企業法務】「これってセクハラ?」とビクビクしている皆さまへ
平成元年の流行語大賞を受賞してから、「セクシュアルハラスメント」「セクハラ」は耳に馴染む言葉になりました。
半面、「こんなことを言ったらセクハラと言われるのでは?」と思うと女性従業員とどうコミュニケーションを図っていけば良いか分からないと思っておられる経営者も相当多いようです。
容姿を褒めてはいけないのかとか、年齢や性別について一切触れてはいけないのではと悩まれているとよくご相談を受けます。
また、「セクハラ」に対する過剰な反応は、女性社員にとっても必ずしも居心地の良いものとは言えない場合もあります。
「呑みニケ−ション」は既に時代錯誤なのかも知れません。
けれども、男性同志なら自然になされる上司から部下への助言や苦言を含んだ交流、職場内外のネットワーキングから、阻害されているように感じている女性社員も多いように思います。
こうした事態が生じるのも、「セクハラ」に対する誤解が元にあるのではないでしょうか。
「セクハラ」のなにが問題?
そもそも「セクハラ」がクローズアップされた背景には、労働者がのびのびと安心して働ける職場環境を作り、さらに、それによって会社全体の生産性も向上させることが目的でした。
「セクハラ」という言葉が一人歩きして、かえって職場内の意思の疎通が阻害される事態が生じているとしたら残念なことです。
そもそも「セクハラ」とは?
厚生労働省の定義によると、セクハラとは、「職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動」であって、これによって職場環境が害されたりした場合がこれにあたるとされています。
特に問題なのは「対価型」と言われるもので、自分の立場を使って相手に性的ないやがらせをするということです。
例えば、「付き合わなければ評価を悪くする」「一緒に飲みに行ってくれたら昇進させてやる」など、相手の意思に反した性的な言動を求め、相手がこれを拒否したりすると、解雇・降格・減給などの不利益を与えることです。
こうした言動が許されないことは、明らかだと思います。
経営者の皆さんが日頃悩んでおられるのは、いわゆる「環境型セクハラ」と言われるものではないでしょうか。
確かに、「胸が大きいね」「太りすぎじゃない、妊娠したのかと思った」という言葉はその言葉を投げかけられた女性従業員だけでなく、周りで聞いている人も不快にすることがあります。
大きな声で性的な体験を話しているのを聞かされたり、自分の性体験を根掘り葉掘り詮索されたりするのも不愉快なことです。
こうした人間関係のモラルでは、仕事のパートナーとして相手を尊重し、気遣いをしているかどうかが重要になります。
ただし、モラル違反と不法行為として損害賠償責任を負うべき行為とは自ずと異なってきます。
次回以降、法的な責任を問われるセクハラとはどのようなものかを検討しながら、皆さんと一緒にセクハラを考えてみたいと思います。