契約書の作り方「契約書の法的効果について」
法的効果とは何かー「罪と罰」の関係は??
法的効果とは、権利や義務が発生するかどうか、ということです。どのような場合に(これを法律要件と言います)、法的効果が発生するのか、これを問題とするのが法律です。法律は、世の中の出来事を、法律要件と法律効果で見るのです。
たとえば、花を見てきれいだと思った、とか、きついことを言われて腹が立った、というのは、感情表現であって、法律関係ではありません。
法律の目からこれを見ると、花を見て、この花を買うには幾ら払わなければならないだろうか、とか、あの人の発言は悪質だから慰謝料(精神的苦痛の損害賠償)の請求ができないかな、というのが、法律的な物の見方になります。「花を買う」(売買契約ー法律要件)と「代金○○円の支払い義務が生じる」(法律効果)、とか、「悪質な発言が不法行為に該当する」(法律要件)ならば「損害賠償の請求ができる」(法律効果)ということです。
分かりやすく言えば、法律要件とは原因であり、法律効果は結果である、と言ってよいでしょう。
法律要件や法律効果は、法律に明記されていますが、私たち当事者で作り出すこともできます。それが契約書です。契約書で、取引先との関係での、法律要件を定め、そして、その結果どうなるか、を取り決めすることができるのです。
ちなみに、有名な文豪ドストエフスキーに「罪と罰」という著作があります。この罪と罰とはどういう関係なのか、ということで、ある有名な小説の主人公が、同義語だろうか、でも少し違う、もしかすると反対の意味ではないか、などと悩む場面が出て来ます。私も中学生のころ、この小説を読んで、うーん、と考え込んだことがありました。しかしこの問題は、法律家から見れば、全く悩む必要のない単純明快なことです。罪というのは、犯罪のことであり(例:人を殺す)、刑事事件の法律要件です。罪を犯すと、刑事事件となり、死刑や懲役刑などの刑罰を受けなければなりません。この刑罰が、法律効果です。つまり罪と罰とは、法律要件と法律効果、という明快な関係になるのです。
無効になる契約書
近代自由主義国家における民法では、契約は自由、というのが大原則です。つまり、契約で自由に法律要件や法律効果の取り決めができる、ということになっています。ですから契約当事者で自由に取り決めしてよい、というのが原則です。
契約と言えば、商品を購入する売買契約とか、不動産についての賃貸借契約とか、銀行やサラ金から借り入れする金銭消費貸借契約等、多種多様なものがあります。会社に就職した時に結ぶのは労働契約(雇用契約とも言う)です。
これら契約の内容は自由です。まず、誰と契約してもいいですし、契約の内容も自由です。契約をどういう場合に終了させるか、というのも自由、というのが原則です。
しかし、原則には例外があります。典型的なのは、強行法規に違反する契約は無効です。強行法規とは、労働基準法や消費者契約法など、違反したら処罰されたり、契約が無効になるような取り決めをした法令のことです。たとえば、労働基準法は、労働関係の最低基準を定め、違反した場合は罰則で強制する法律です。これによって、1日の労働時間は8時間、1週間は40時間以内としなければならず、それを越えて働かせた場合は残業手当を支払わなければならない、ということになります。
また、売買契約について言えば、消費者契約法や特定商取引法に違反する契約は、その部分は無効になります。
法的効果を生かすためのポイント
法的効果を生かすためのポイントとしては、強行法規に違反しないようにすることです。世の中の法規(法令)には、強行法規と任意法規があります。民法の債権法は、基本的には任意法規であって、民法と異なる契約をすることができます。
これに対し、労働基準法とか消費者契約法とか特定商取引法などは強行法規です。
契約の法的効果を生かすには、強行法規に違反しないことが大切です。それには、法律全般の基本的知識と理解が必要ですことを知らなければなりません。
契約書自体は一般の人でも作ることができますが、その内容に問題がないかどうかは、少しでも気になる場合は、やはり弁護士等の専門家のチェックを受けるのが無難と言えます。
交通事故と企業法務に注力している。
交通事故は,年間相談件数104件(受任件数75件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
後遺障害の等級アップについても、多数の実績を持つ。
企業法務分野に取り組む際には、『経営者のパートナーとして会社を良くしていく』という姿勢を一貫しており、企業の『考え方』を共有し、寄り添うことを大切にしている。