2019年04月22日

債権・売掛金回収の方法「法的手段に出る前の準備」

1 契約書等の確認

売掛金を支払ってくれない相手方に裁判を提起したとしても,必ずしもこちらの請求が認められるとは限りません。

請求が認められるためには,相手方に特定の金額の債権をもっていること,それが支払時期を過ぎていることを証明することが必要です。
それを端的に示すものが,相手方との間で取り交わした契約書です。

ですから,まず契約書があるのか,ないのか,あったとしたら契約の相手方は会社なのか個人なのかなど基本的なことを確認することが必要になります。

当然ながら,契約書が交わされていて,金額や支払時期が明記されている場合は裁判を有利に進めることができますが,取引関係が長期間続いていて,特定の取引についての契約書が作られていないことも少なくありません。

けれども,契約書がないからといって請求をあきらめるにはまだ早いと言わなければなりません。
相手方に送った発注書,見積書,請求書,納品書等も取引の内容を示す証拠になり得ます。
こうした場合には,例えば発注書や見積書に書かれている金額で相手方が承諾したことを示すメールや,見積書に記載されている物の納品書などを添えることによって,契約内容を証明することになります。

さらに,「納期が遅れた」とか「納品された商品に瑕疵があった」とか,相手方から出てくるかも知れない反論を想定して,証拠を収集する必要がありますので,具体的な案件でどんな証拠が必要なのかは弁護士にご相談下さい。

2 相手方の財産状況の調査

十分な準備をして裁判を提起し,勝訴判決を得たとしても,相手に十分な資力がなければ支払を確保することはできません
。こうした場合に備えて,裁判を提起する前に相手方の財産を仮に差し押さえたりすることがあります。

仮差押えをするためには,まず相手にどんな資産があるのかを確認することが必要です。
具体的には,相手方が主に用いている銀行口座を調べたり,相手方が所有している不動産や車両設備等の動産等の資産を調べたりします。
相手方の取引先の業者も調べておきたいポイントです。
相手方が取引先業者に対してもっている未回収の売買代金や工事代金,請負代金も差押えの対象になるからです。

3 相手方の協力が得られるうちにやっておくこと

ところで,相手方に対して裁判を提起すると,相手との関係は完全に切れてしまいます。
このため,裁判を提起する前,まだ相手方と連絡がつき,ある程度の協力が得られる間にしておいた方がその後の回収がスムーズに進むことがあります。

まずは,支払が遅れた理由といつまでに支払えるのかを確認することが考えられます。
そのやり取りのなかで,例えば一週間後に取引先からの入金の予定があるなど,支払能力に関する情報が得られる可能性があります。

代金が支払われていない商品があれば,それを引き渡すように交渉することも大切なことです。ただし,無断で,あるいは力尽くで持ち出したりはしないで下さい。
相手方と未払金の残高について確認書等を作成したり,代表者と売掛金の支払いについて連帯保証契約を締結することも考えられます。

このように,法的手段をとる前に十分な対策を講じることによって債権をより確実に回収することができます。
具体的な事例に応じて必要な準備は異なりますので,詳しくは,ぜひ弁護士にご相談下さい。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 森岡真一 >>プロフィール詳細
交通事故と企業法務に注力している。
交通事故は,年間相談件数104件(受任件数75件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
後遺障害の等級アップについても、多数の実績を持つ。
企業法務分野に取り組む際には、『経営者のパートナーとして会社を良くしていく』という姿勢を一貫しており、企業の『考え方』を共有し、寄り添うことを大切にしている。

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