【企業法務】わかりやすい働き方改革・年休の消化義務に罰則あり?!
働き方改革関連法が施行されました
野党などの反発もあり、当初の案から変わったところもありますが、法案は成立し、平成31年4月から、その一部が施行されています。
(2)同一労働同一賃金関連(パート・有期雇用労働法)
(3)同一労働同一賃金関連(労働者派遣法)
(4)その他改正項目(高度プロ制度、フレックスタイム制度、年次有給休暇の消化義務、勤務間インターバルの努力義務、産業医の権限強化等)
(5)その他改正項目(時間外60時間超えの中小企業の割増賃金率見直し)
となっております。
このうち(1)は大企業では平成31年4月から施行されていますが、中小企業では令和2年4月からですし、(2)(3)(5)についても、令和2年4月以後、順次施行されます。
一方、既に施行されているのが(4)です。
今回は、この(4)のうち、 年次有給休暇の消化義務 について、ご紹介致します。
改正の趣旨
年5日の年次有給休暇(以下、年休と言います)の消化義務が定められました。
その趣旨を説明します。
年休は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時期に与えることとされています。
しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年休の取得促進が課題となっていました。
このため、このたびの労働基準法の改正で、平成31年4月から、全ての企業において、年10日以上の年休が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、 年休の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられた ものです。
年休の発生要件と付与日数
ここで、年休の発生要件と付与日数についてどうなっているのか、確認しましょう。
労働基準法39条により、
②全労働日の8割以上を出勤していること
この2点を満たしていれば、年休を取得することができます。
休暇日数ですが、就職して最初の6か月を経過した人は10日、以後、1年経過するごとに1日ずつ増えて行きます。
以後は、毎年20日間の年休を取得できます。
使用者の義務になったこと
これまでは、この年休は労働者の権利であって、権利を行使しなくても問題にはなりませんでした。
しかし、平成31年4月からは、このうち 5日間は、確実に休暇を取得させることが使用者の義務 となったのです。
そして、 違反した場合は、30万円以下の罰金刑 に処せられることになりました。
就業規則に明記すること
休暇に関する事項は、就業規則の記載事項となっていますから、今回の改正に基づいて、5日以上の年休取得をルール化して、 就業規則に明記する必要 があります。
これを怠った場合にも、労働基準法89条違反として、 30万円以下の罰金 に処せられることになりますので、注意が必要です。
時季指定の方法
では、使用者側として、具体的にどのように時季指定をすればよいか、ご説明します。
使用者は、時季指定に当たっては、 労働者の意見を聴取しなければなりません 。
また、できる限り労働者の希望に添った取得時季になるよう、 聴取した意見を尊重するようにしなければなりません 。
一方で、 既に5日以上の年休を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません 。
たとえば、今年4月1日付けで採用した社員の場合、今年10月1日に年休10日間を取得しますから、以後1年間に、5日は年休を取得させるように、その時季を定める必要があります。
定め方としては、お盆が所定休日となっていない場合、8月13日~16日を含む5日間で年休を取得させることで、義務を果たすことができます。
また、年末年始の、所定休日に連続して年休を取らせるのも合理的です。
たとえば、年末年始の所定休日が12月29日から1月3日まで、となっているのであれば、1月4日~7日までの4日間を年休消化日とすることもできます。
更に、閑散期がハッキリしている会社の場合は、その時季にするとか、労働者本人や子供の誕生日とその前後を休みとするなどの方法も考えられます。
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