2022年06月15日

2022年4月1日施行 育児・介護休業法の改正点について弁護士が解説

2021年3月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月1日から段階的に施行されます。

今回は、2022年4月1日に施行される改正点について解説します。改正されるのは3点です。1つめは、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化、2つめは妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務化、3つめは有期雇用労働者の育休休業・介護休業取得要件の緩和です。

1つめと2つめの改正については、違反した場合は、厚生労働大臣から事業主に勧告がなされ、勧告に従わない場合は公表される可能性があります。

 

1 育児休業を取得しやすい雇用環境整備

育児休業を取得しやすい雇用環境整備とは、具体的には①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施 ②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口や相談対応者の設置) ③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供 ④自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知のいずれかを実施することです。

いずれかを実施すればよいのですが、複数実施することが望ましいとされ、実際、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するには、複数実施することが効果的です。

なお、「産後パパ育休」とは出生時育児休業制度のことで、この点については2022年10月1日から施行となります。

 

➀の「研修」の対象は、全労働者が望ましいですが、少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にしてください。

研修の実施 に当たっては、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的とされています。

 

②の「育児休業に関する相談体制の整備」とは相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、

これを周知することです。形式的に窓口を設けておけばよいというものではありませんので、注意が必要です。

 

③の「育児休業の取得に関する事例の収集及びその雇用する労働者に対する当該事例 の提供」とは、自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することです。事例の収集、提供に当たっては、男女双方の事例を収集し、提供することが原則ですが、男女いずれかの対象者がいない場合に片方のみとなることはやむを得ません。また、提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集、提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することが大事です。

④の 「育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知」とは、 育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものの配付や事業所内やイントラネットへ掲載等を行うことです。

 

2 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認措置

労働者又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出をしたときに、当該労働者に対し育児休業制度等を周知するとともに、これらの制度の取得意向を確認する措置をとらなければいけません。

当然ですが、取得を控えさせるような形での周知・意向確認はこの義務を果たしたとは言えません。

 

周知する内容は① 育児休業・産後パパ育休に関する制度(制度の内容など) ② 育児休業・産後パパ育休の申出先(例:「人事課」、「総務課」など) ③ 育児休業給付に関すること ④ 労働者が育児休業・産後パパ育休期間において負担すべき社会保険料の取扱いについてです。

 

なお、産後パパ育休に関する内容は2022年10月1日から施行です。

 

いつまでに行うかというと、労働者が希望の日から円滑に育児休業を取得することができるように配慮し、適切な時期に実施することが必要とされています。

具体的には、妊娠・出産の申出が出産予定日の1か月半以上前に行われた場合は出産予定日の1か月前までに、出産予定日の1か月前までに申出が行われた場合は2週間以内に、出産予定日の1か月前から2週間前の間 に申出が行われた場合は1週間以内などできる限り早い時期に措置を行うことが必要です。出産予定日の2週間前以降に申出があった場合や、子の出生後に申出があった場合は、できる限り速やかに措置を行うことが必要となります。

 

方法は、①面談(オンライン可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等のいずれか(③④は労働者が希望した場合に限る) です。

 

3 有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

 

有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件が撤廃されます。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することができます。

この点については就業規則を変更しなければなりませんので、早急に対応する必要があります。

当事務所では就業規則の見直しも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 

2022年06月15日 | Posted in お役立ちブログ, その他, 企業法務のお役立ちブログ, 浮田美穂の記事一覧 | | Comments Closed 

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