2025年08月21日

【お役立ちブログ】休車損害について

はじめに

会社が所有する営業車両が交通事故に遭い、修理期間中、その営業車両が使えなくなることがあります。

また、損傷が大きいなどの理由で修理ができず、車両の買い替えを余儀なくされることもあります。

そのような場合、修理や買替えのため営業車両が使用できない期間に本来(事故に遭わなければ)営業車両を稼働することにより得られたはずの収入を賠償してもらうことはできるのでしょうか。

このように、修理や買替の期間中、営業車両が使用できないために本来得られたはずの収入を「休車損害」と言われます。

一定の場合に休車損害の賠償が認められることは、最高裁判所の判例でも述べられています(最高裁昭和33年7月17日判決など)。

今回は、 休車損害の賠償が認められるのはどのような場合か  休車損害はどのように計算するのか などについて、解説します。

 

 

休車損害が認められるための要件

休車損害が認められるための一般的な要件としては、

 ①事故車を会社の営業に使用する必要があること   ②代替車両を容易に調達できないこと   ③遊休車が存在しないこと 

などが挙げられます。

上記要件のうち、特に実務上、問題となることが多いのは、 ③遊休車が存在しないこと という要件です。

なお、代車を使用し、代車使用料の請求が認められる場合には、休車損害は認められないものとされています。

タクシーやトラックなどは、通常、代車を調達して対応することが難しい場合が多く、休車損害の請求が問題となる場合が多いです。

 

遊休車について

 「遊休車」とは、予備の車両のことです。 

会社の規模や業種にもよりますが、会社が予備の営業車両を保有している場合があります。

遊休車がある場合には、営業車両が事故に遭い、修理や買替えが必要となったとしても、修理や買替えの期間中、その遊休車を使って営業することができ、営業上の損失は発生しないと考えられます。

したがって、 遊休車が存在する場合には、休車損害を請求できない と考えられているのです。

もっとも、会社が予備の車両を保有しているからといって、一概に休車損害の賠償が認められないとされるわけではなく、 諸事情を総合的に考慮して、会社が予備の車両を活用して休車損害の発生を避けることができたかどうかを判断する とされています。

考慮される事情としては、例えば、 保有車両の実働率、保有台数と運転手の数との関係、運転手の勤務体制、営業所の配置及び配車数、仕事の受注体制 、などが挙げられます。

これらの事情を考慮した結果、会社が予備車両を活用しても休車損害の発生を回避できなかったと判断される場合には、「遊休車が存在しない」ものとして、休車損害の賠償が認められます。

 

「遊休車が存在しないこと」の立証責任

休車損害の賠償が認められる要件としての「遊休車が存在しないこと」については、休車損害の賠償を求める会社側(被害者側)が証明する責任を負います。

つまり、被害者側から積極的に、「遊休車が存在しない」こと(予備車両があったとしても、それらを活用して休車損害の発生を回避することはできなかったこと)を基礎づける事情を主張し、それらの事情を裏付ける証拠を準備しなければなりません。

休車損害の計算方法

休車損害の賠償が認められる場合に、休車損害の金額はどのように計算することになるのでしょうか。

一般的には、 「(事故車両の1日当たりの営業収入-経費)×休車日数(修理や買替に要した期間。ただし、詳細は割愛しますが、相当性が認められる期間に限られます)」 で計算することが多いです。

ここで、営業収入から差し引かれる「経費」は、いわゆる「変動経費」に限られ、「固定経費」は控除されないと考えられています。

「変動経費」とは、営業車両に即して言えば、車両の稼働率によって比例的に増減する費用のことで、具体的には、燃料費、車両修繕費、高速道路通行料金などです。これらの経費は、車両を稼働しないことにより支出を免れる費用ですので、賠償の対象から除外すべきとされています。

一方、「固定経費」とは、営業車両に即して言えば、車両が稼働しているかどうかにかかわらず、固定的に発生する費用のことで、具体的には、減価償却費、リース料、保険料などです。

これらの経費は、車両を稼働しなくても支払いを余儀なくされるものですので、賠償の対象となり控除されないものと考えられています。

なお、「人件費」については、乗務手当など変動経費と考えられる部分と、固定給など固定経費と考えられる部分があり、性質に応じて控除の要否が判断されます。

 

休車損害の認定資料

休車損害の請求に際しては、基本的に、客観性の認められる資料を提出する必要があります。

例えば、会社の会計資料や、トラック運送事業者(一般貨物自動車運送事業者)であれば「事業損益明細表」、「事業実績報告書」など、監督官庁への提出が義務付けられている資料等を準備することになります(加害者側の保険会社からも、このような資料の提出を求められるのが一般的です)。

 

まとめ

休車損害について、解説してきました。

休車損害は、「遊休車が存在しないこと」を請求する側が証明しなければならず、差し引くべき経費(変動経費)と差し引かない経費(固定経費)の選別や客観性の認められる資料の準備も必要で、請求に際し専門的知見を必要とする場面も多いです。

休車損害の請求でお困りのことがありましたら、ぜひ、顧問弁護士などの弁護士にご相談頂きたいと思います。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|臼井 元規弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。

2025年08月21日 | Posted in お役立ちブログ, 企業法務のお役立ちブログ, 臼井元規の記事一覧 | | Comments Closed 

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