2020年03月17日

【改正相続法】その家、相続できる?「配偶者居住権」とは。

この度の相続法改正では、残された配偶者の生活の場所を確保するための制度がいくつか盛り込まれています。

そこで、今回は、相続法改正の目玉と言っても過言ではない「配偶者居住権」について、Q&A方式で解説します。

Q 「配偶者居住権」とは何ですか?

「配偶者居住権」とは、配偶者相続人(夫に先立たれた妻、あるいは妻に先立たれた夫)が、被相続人である他方配偶者(亡くなった夫、あるいは亡くなった妻)が持っていた家の所有権を相続しない場合でも、相続開始時(夫あるいは妻が亡くなったとき)に、その家に住んでいた場合に、原則として終身の間、その家に住み続けることができる権利です。

これまでも、配偶者相続人は、家を相続することにより、以前から住んでいた家に住み続けることができましたが、相続する家の価値が高い場合などには、他の預貯金などの遺産を相続することができず、相続により、十分な生活資金を確保できないという不都合がありました。

そこで、配偶者相続人が、住み慣れた家で生活しつつ、生活資金も確保できるよう、新たに「配偶者居住権」が設けられました。

Q 「配偶者居住権」とはどのような権利ですか?

配偶者相続人が、原則として、終身の間(配偶者相続人が亡くなるまで)、今まで住んでいた家に、無償で住み続けることができる権利です。

ただし、これまで住んでいたときと同じ用法で、適切な管理を怠らずに、家の使用と収益をしなければなりません。

また、「配偶者居住権」は、配偶者という立場にあるために認められた特別な権利ですので、その権利を、誰かに譲り渡すことはできません

 

Q 「配偶者居住権」を取得するにはどうすればいいですか?

「配偶者居住権」を取得する方法は、3つあります。

まずは、遺産の分割で取得する方法です。この場合は、相続人全員で話し合って、相続人全員が合意する必要があります。

次に、遺言で、「配偶者居住権」を遺贈や死因贈与の目的とする方法です。

これは、亡くなった被相続人が、遺言の中に、配偶者に「配偶者居住権」を遺贈するなどと書いておく方法です。

先ほどの遺産の分割による方法は、相続人全員の了解がなければ「配偶者居住権」を取得できないのに対して、この方法による場合は、遺言を書く人の意思のみで残された他方配偶者に、「配偶者所有権」を与えることができます。

最後に、家庭裁判所の審判により取得する方法があります。

相続人間で話し合いがまとまらないときであっても、配偶者相続人が、希望すれば、家庭裁判所の審判により、「配偶者居住権」が認められることがあります。

Q 「配偶者居住権」の制度は、いつから始まりますか?

「配偶者居住権」に関する改正相続法の施行日は、令和2年4月1日です。

令和2年4月1日以降に開始する相続において、「配偶者居住権」が活用できます。

また、令和2年4月1日以降に作成する遺言において、「配偶者居住権」を遺贈することができるようになります。

 

Q 「配偶者居住権」には節税の効果があるのですか?

「配偶者居住権」を活用すれば、節税の効果が得られると言われています。

例えば、夫が亡くなった際の相続で、妻に「配偶者居住権」を、子供が「配偶者居住権」の負担がある家の所有権を相続したケースを考えてみましょう。

妻に関しては、1億6000万円までの財産あるいは遺産全体の2分の1までのいずれか大きい方の金額までは、非課税であるため、配偶者居住権の価値がよほど高いとか、妻が相続する遺産がよほど多いとかいう場合などでない限り、妻には相続税が課税されないと考えられます。

また、子供に関しては、「配偶者居住権」の負担がついている家を相続する方が、その負担がない完全な所有権の家を相続するよりも、相続税が安くなります。

その後、妻が亡くなって、子供が家を相続した場合どうなるでしょうか。

妻が亡くなると、「配偶者居住権」は、消滅します。「配偶者居住権」の消滅により、子供が夫(子供から見た父親)から相続した家は、「配偶者居住権」という負担がなくなり、完全な所有権になり価値が増加します。

結果、夫が亡くなった際の相続時に、妻が「配偶者居住権」の価値に相当する部分の相続税を払っていなかったとすれば、「配偶者居住権」の価格に相当する金額については、一度も相続税を払うことなく、子供に相続させることができることになります。

ただし、本問について、述べた回答は、あくまでも私見であるため、実際の取り扱いは異なる可能性があるとともに、今後、法改正等により、課税対象とされる可能性も否定できません。

個々具体的な事案において、実際に「配偶者居住権」を利用した節税効果があるかどうかは、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

これまで説明してきたとおり、「配偶者居住権」の制度により、残された配偶者が、生活資金を確保しつつも、慣れ親しんだ家に住み続けることが可能となります。また、節税効果があるとも言われています。

「配偶者居住権」の有効活用については、弁護士にご相談ください。

さて、次回は、「配偶者短期居住権」の制度について、今回の「配偶者居住権」との比較も交えて解説する予定です。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。
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