2019年06月26日

【交通事故】こんな症状があれば高次脳機能障害かも?

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害は,記憶,学習,思考,言語,計算など, 人の知的能力を司る脳の機能(認知機能,高次脳機能)に障害を負った状態 を指します。

そのため,あらゆる脳の傷害や疾患が,高次脳機能障害を発生させる原因になりえます。
典型的な疾患としては脳卒中やアルツハイマー病などが代表的ですが, 交通事故や労災事故で脳外傷を負った場合にも,高次脳機能障害は発生します 

今回は,その症状についてくわしくお話しします。

高次脳機能障害の症状

傷ついた脳の部位や範囲によって,高次脳機能障害の症状は様々です。

たとえば,記憶力や注意力,判断力といった能力が低下してしまうことがあります。

また,感情の落差が激しくなる,怒りっぽくなる,無気力になる,幼稚な行動が目立つようになる,暴行や暴言をするようになるといった,その人の性格が大きく変わってしまうこともあります。

場合によっては,てんかん発作を発症することもあります。

このような様々な症状があるのですが,厚生労働省の基準では, 記憶障害  注意障害  遂行機能障害  社会的行動障害 の4つが,高次脳機能障害における障害として挙げられています。

そこで以下では,これら4つについてご説明します。

4つの障害

(1)記憶障害

脳に傷害を負った後,新しいことが覚えられなかったり,傷害を負う前のことが思い出せなくなったりすることがあります。

具体的には,こんな症状が出ます。

・5分前に話した内容を忘れている
・買い物を頼んでも,1度に複数の物を買ってくることができない
・事故前のことがあいまいにしか思い出せない,あるいは覚えていない
・忘れないようにメモをとっても,メモ自体を忘れる

記憶障害は,高次脳機能障害の多くの症例に確認されている,代表的な症状といっていいでしょう。

(2)注意障害

注意力とは,あるものへ意識を集中させたり,複数のことを同時に行ったりする力のことです。

この機能が低下すると,このような症状が出てきます。

・ぼんやりしていて関心を示さない
・気が散りやすく飽きっぽい
・簡単なミスや勘違いが多い
・2つ以上のことを同時にできない
・他のことに関心を向けることができない

このように,1つのことに集中できていても,2つのことを同時にできない場合もこれにあてはまります。

(3)遂行機能障害

遂行機能は,言語能力や記憶力といった脳の機能をまとめてコントロールして,自ら考えてものごとを解決する能力のことです。

遂行機能障害ではこんな症状が出ます。

・自分で計画を立ててものごとを実行することができない
・人に指示してもらわないと何もできない
・約束の時間に間に合わない
・話が回りくどくなった

遂行機能障害の場合,受動的なことであれば問題なくこなせることも多々あって発見が難しいことがあるので,注意が必要です。

(4)社会的行動障害

文字通り,社会的行動が困難となる障害で,人格の変化とも症状が重複しますが,以下のような症状が挙げられます。

・情緒不安定になり暴力を振るう,衝動的になる
・意思の疎通がうまくできない
・自己中心的になる
・羞恥心がなくなり,人前でやってはいけないことをやる
・必要のないものを買うようになる,セールスに乗せられやすくなる

病院での診断

多くの場合,こういった症状が複数起きてきますが,1つの症状は目立つもののあとの症状はさほどでもない,といったこともあります。

他の疾患の可能性もありますので,くわしくは医師に診断してもらうことが必要です。

交通事故や労災事故の場合,相手方に賠償をしてもらうことになりますが,高次脳機能障害はわかりにくいため,賠償が難しいことが多々あります。
 上のような症状があり高次脳機能障害が疑われたら,弁護士まで相談されることをおすすめします 

執筆者プロフィール
弁護士紹介|臼井 元規弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。

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