【お役立ちブログ】早期事業再生法とは?
1 早期事業再生法の背景
2025年6月6日、 「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律」 (通称「早期事業再生法」)が成立しました。2026年12月頃までに施行される予定です。
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が多額の債務を負い、近年はその返済が本格化しました。物価高や人手不足等もあり、倒産件数が多数に上っている状況にあります。こうした社会情勢を受け、経営が窮境に陥るおそれがある事業者を救済し、事業再生に取り組めるよう支援することが議論されていました。
こうして成立した早期事業再生法は、経済的に窮境に陥るおそれのある事業者について、手続の透明性・公正性を担保しつつ、 金融債務の整理を迅速に行うことで、早期の事業再生を行うことができる制度 を創設する法律です。今回は新しくつくられる早期事業再生法の手続きについて、概略を解説したいと思います。
2 早期事業再生法の特徴
資金繰りが逼迫した企業は、破産や民事再生などの裁判所の手続きにより再起を図ることが多くあります。この場合、 取引先への支払いが止まるため、企業のブランド価値が毀損 したり、従業員が離職し技術が失われたりするなどのリスクがありました。
このようなデメリットを回避するために、各債権者との協議による債務整理手続きをすることも考えられます。しかし、債務整理を完遂するためには、 債権者の全員の同意 が必要です。そのため、たとえ100社中99社の金融機関が応援してくれても、 1社だけが反対すると債務整理がうまくいかなくなり 、結局は破産などの手続きによらざるを得ないことになります。
早期事業再生法では、こうした問題に対応し、 債権者の人数と額による多数決による債務整理 を可能にし、残りの反対する債権者に対しても、 債権カットや返済猶予を強制 することができます。また、対象となる債務は 金融債務(貸金債務)に限定 されているため、営業上の取引先への支払いは通常通り継続できる仕組みになっています。
3 手続きの流れ
手続の期間はおおよそ3~6ヶ月程度と想定されており、 民事再生手続きよりも短期間で決着 することが期待されています。また、信用不安の拡大を防止するため、原則として 手続きは非公開 とされています。
手続は、概要、以下のような流れで進めることになります。
経済産業大臣が指定する指定紛争解決機関や事業再生ADRなどの公正な第三者機関に対して、手続きの利用を申請します。
② 再生計画案の策定
企業の収益改善策や、金融機関に求める支援(債務免除など)を盛り込んだ事業再生計画案を作成し、第三者機関による審査を受けます。
③ 債権者集会
対象となる金融機関を招集し、債権者集会を実施します。最終的な決議において、 議決権総額の4分の3以上 で、かつ、 債権者数の過半数の同意 が得られれば、計画案は可決されます。
④ 裁判所の認可
可決された計画案について、裁判所に認可を申し立てます。裁判所は、手続きに不正がないか、企業の清算価値以上の弁済になっているかなどを確認し、認可決定を下します。
⑤ 計画の実行
裁判所の認可により、 反対していた債権者も含め、すべての対象債権者に対して計画の効力 が及びます。企業は計画に基づき、返済や事業改革を実行していきます。
4 手続に適したケース
手続を利用するに適したケースとして、下記のようなケースが考えられます。
- (1)一部の債権者がネックになるケース
早期事業再生法は主に金融債務の調整を目的とした制度ですので、債務多くが金融債務である場合に適しています。とくに、債権者間で意見が異なる場合には有効だと考えられます。
たとえば、メインバンクをはじめとするほとんどの債権者は支援に前向きなものの、 一部の金融機関のみが強硬な姿勢 である場合、 多数決により計画を強制 することができますので、より確実に事業再生を図れることになります。
- (2)取引先に知られたくないケース
消費者のブランドイメージが重要な小売業や、特定の仕入先との信頼関係で成り立っている製造業などは、事業再生を公表すると経営がうまくいかなくなる可能性があります。
そのような場合には、早期事業再生法の 非公開手続によることで、事業の価値を損なうことなく 事業再生を図ることができる可能性が高まります。
- (3)見通しを立てたいケース
たとえば、スポンサーから出資を受ける場合、私的整理の場合は債権者全員の同意が必要になるため、事業計画の成立の見通しが立ちにくいことになります。
この点、早期事業再生法の手続きによる場合は、メインバンク等の一部の大口の債権者とのやりとりの中で、 事業再生計画に賛同を得られるかの見通しがより立ちやすく なります。
5 終わりに
早期事業再生法は新しい制度であり、まだわからないところが多々ありますが、企業にとって 前向きなリスタートのための手続き として、有力な選択肢になりうると考えられます。
もしものときはどんな選択肢があるのか、気にかかることがあれば、まずは早めにご相談ください。
弁護士 森長大貴 >>プロフィール詳細1987年福井県生まれ。
債務整理やインターネットトラブルに注力している。
相談に来られた方が叶えたい希望はどこにあるのか、弁護士である前に1人の人間として、その人の心に寄り添って共に考えることを心がけている。








