契約書の作り方「契約書の名義について」
今回のコラムでは、契約書の「名義」について、詳細をご紹介します。
企業同士の契約書の場合、会社の営業担当者同士で商談を成立させることがあります。この場合、以下のどの形式で契約書を作成すればよいか、迷うことはないでしょうか。
A:営業担当者が商談を成立させたので、会社名と営業担当者名を併記して、営業担当者の印を押せばよい。
B:社名を記載し(社名の横判)、社印を押せばよい。
C:社名と代表取締役名を記載し(社名と代表取締役の横判)、会社名の記載のある代表取締役の印を押せばよい。
会社が契約の当事者になる場合、契約の効力がきちんと会社に及ぶように契約書を作成する必要があります。
きちんと契約書を作成していないと、後から、「それは営業担当者が勝手にしたことであり、会社は了承していない。」と言われ、契約は無効であると主張される可能性があります。営業担当者同士で合意しても、会社の決済が通っていなかったということがあるからです。
代表取締役は株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(会社法349条第4項)ので、Cの契約書にするのが適当です。会社名の記載のある代表取締役の印は実印でなくても構いませんが、大事な契約の場合は、お互いに実印で取り交わすのがよいと思います。
Aの契約書の場合は、営業担当者が勝手にしたことだと言われると、契約が無効になる可能性が高いです。
会社法13条本文には、「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす」とありますが、営業担当者はこれに該当しません。
営業担当者が当該契約を締結する権限があることを確認できればよいですが、そうでない場合は、Aの契約書は後々トラブルになりかねない契約書です。
ではBの契約書はどうでしょうか。
Bの契約書も、契約締結の権限のある人が作成したのかどうか、契約書を見ても分かりません。Aと同じように後々トラブルになるかも知れません。
以上から、Cの契約書で作成するのが一番適当です。
会社との契約書で名義人をどうするかのポイントは以下の通りです。
- 社名と営業担当者名で契約をすると、後に契約が無効だと言われる可能性がある。
- 社名だけの場合でも、同様の可能性がある。
- 社名と代表取締役名を記載し(社名と代表取締役の横判)、会社名の記載のある代表取締役の印を押すのが適当である。
契約書の名義をどうすれば良いかわからない場合は、上記、3つのポイントをチェックしてくださいね。
交通事故と企業法務に注力している。
交通事故は,年間相談件数104件(受任件数75件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
後遺障害の等級アップについても、多数の実績を持つ。
企業法務分野に取り組む際には、『経営者のパートナーとして会社を良くしていく』という姿勢を一貫しており、企業の『考え方』を共有し、寄り添うことを大切にしている。