2018年09月27日

事業資金の保証が変わります~公正証書による意思表示と情報提供

事業資金の保証が変わります~公正証書による意思表示と情報提供

1 保証に関する規定の改正

この度の民法改正では,保証に関する規定が改正されます。改正点は多岐にわたり,重要な改正もありますので,2回に分けて,保証に関する改正を取り上げたいと思います。

今回は,まず,事業のための貸金の保証に関して,保証人の保証意思を公正証書で確認しなければならなくなるという点を中心に解説します。

2 事業資金の保証では保証人保護が必要と言われてきたこと

保証契約は,その性質上,保証人が自己の責任を認識しないまま安易に保証に応じてしまいやすく,後で想定していなかった多額の債務の履行を求められ,保証人が生活の破綻に追い込まれるといった事例が数多く報告されてきました。

そして,このような問題が特に深刻に生じるのは,主たる債務者が事業のために資金を借り入れた場合であると言われてきました。それは,保証債務が多額となる場合が多く,主たる債務者が返済できなくなるケースも少なくないからです。

こうした問題意識から,主たる債務者が事業のために資金を借り入れた場合に,保証人を保護するための規律が必要とされ,新たな規定が設けられることになりました。

3 公正証書による意思表示と情報提供が必要になる

今回の改正により,事業のために負担した貸金に関する保証契約において,社長や取締役などその会社の経営に関わる人を除く個人を保証人とするものについては,所定の方式によって保証人の保証意思を確認する公正証書を作成しなければ,保証契約は無効とされます。

これは,保証契約の締結を慎重にさせることで,保証人を保護しようとするものです。
債権者としては,事業のための資金を融資する際に,その会社の経営者ではない人を保証人にする場合には,基本的に公正証書による保証意思の確認をしなければなりませんので,注意が必要です。

また,事業のための貸金の保証について,主たる債務者には,財産や収支の状況など返済できるかどうかに関する情報を,保証人に対して提供する義務が課され,主たる債務者が返済できるかに関する情報を保証人に提供せず,

または虚偽の情報を提供し,そのために保証人が保証契約を締結してしまった場合には,保証人が保証契約を取り消せるという規定も新設されます。

これらの規定により,保証人が適切な情報に基づいて,保証契約を締結するか否かを判断することができるようになり,保証人の保護に繋がると考えられています。

債権者としては,保証契約を取り消されることのないよう,主たる債務者が保証人に対して,返済できるかに関する正しい情報を提供しているかどうかを,調査するべきでしょう。

また,銀行から融資を受ける際に,親族や知人に保証を頼む場合には,会社の経営に関する情報を正確に説明することが必要となります。


執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 小堀秀行 >>プロフィール詳細
30年以上に渡って,企業からの様々な相談を受けている。
顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。

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