【お役立ちブログ】令和7年4月施行 育児・介護休業法改正(育児)
1 はじめに
育児・介護休業法が改正されており令和7年4月1日から段階的に施行されています。
今回は、令和7年4月1日に施行された法改正のうち育児に関する部分を取り上げます。
毎年春になると卒園式や小学校の入学式に向かう親子連れを目にすることがあります。
自分自身が子供のころを思い出すと、父親は仕事に行っており、
卒園式や小学校の入学式には、母親だけが来ていた同級生が多かったと記憶しています。
近年は、母親だけではなく、華やかなネクタイと明るめのスーツを着た父親も、
子供と一緒に卒園式や入学式に向かう場面をよく見かけるようになりました。
育児・介護休業法は、労働者が、子の年齢と発育状況に応じて、
柔軟に働けるように何度も改正されていますが、今回の法改正により、
入園(入学)式や卒園式に参加するための休暇を取りやすくなりました。
2 子の看護休暇の見直し
令和7年4月に施行されたの法改正の目玉が、 子の看護休暇の見直し です。
改正に伴い、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に名称変更されました。
これまで、子の看護等休暇の取得理由は、
①子の病気や怪我、②予防接種や健康診断に限られていましたが、
③感染症に伴う学級閉鎖等、④入園(入学)式、卒園式も追加されました。ただし、学校等の行事のために広く休暇をとれるというわけではなく、
④の入園(入学)式や卒園式への参加のための休暇には、
授業参観や運動会への出席は含まれません。
また、子の看護等休暇の対象となる子の範囲も、小学校就学の始期に達するまでから、
小学校第3学年終了(9歳に達する日以後の最初の3月31日)までに拡大されています。
さらに、子の看護等休暇を取得できる労働者の要件についても改正がありました。
従前は、労使協定によって、 継続雇用期間6か月未満の労働者を、子の看護休暇取得の対象者から除外することができましたが、法改正に伴い、それができなくなりました。
なお、子の看護等休暇の取得可能日数は、法改正前と同様に、
子が1人の場合は1年間に5日間、子が2人以上の場合は1年間に10日間までです。
3 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
法改正以前から、3歳未満の子を養育する労働者は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、
使用者に対して、所定外労働(残業)の免除を請求することが認められていました。
令和7年4月1日以降は、 小学校就学前の子を養育する労働者であれば、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、所定外労働(残業)の免除を請求することができるようになりました。
なお、所定外労働(残業)免除の請求ができるということですので、
所定外労働(残業)免除の請求をしない労働者に、所定外労働(残業)を命じることは可能ですが、
使用者や上司の方から労働者に対して、所定外労働(残業)免除の請求を思いとどまらせるように
働きかけることは避けるべきでしょう。
今回の法改正により、小学校就学前の子を養育する労働者は、
権利として、所定外労働(残業)の免除を請求できることになっていますが、
小学校就学中の子を養育する労働者に対しても、
所定外労働(残業)をなくしたり、減らしたりして欲しいとの要望があれば、
職場全体の業務量との兼ね合いもありますが、
労働者の意向を尊重することが望ましいことは言うまでもありません。
4 短時間勤務制度の代替措置としてテレワーク等を追加
短時間勤務制度の代替措置にテレワーク等が追加されました。
3歳未満の子を養育する労働者は、短時間勤務制度を利用することができるところ、
業務の性質又は業務の実施体制に照らして、措置を講じることが困難と認められる業務に
従事する労働者については、労使協定を締結することによって、
短時間勤務制度の対象外とすることができます。
その場合、使用者は、別途、短時間勤務制度の代替措置を講ずる必要があります。
これまでは、短時間勤務制度の代替措置として、
①育児休暇に関する制度に準じる措置
②フレックスタイム制
③始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ(時差出勤の制度)
④保育施設の設置・運営等
が認められていましたが、新たに、
⑤テレワーク等というメニューが追加されました。
5 育児のためのテレワーク等導入(努力義務)
3歳未満の子を養育する労働者が、テレワーク等を選択できるように措置を講ずることが、使用者の努力義務となりました。この努力義務は、通勤時間を削減すること等で、
3歳未満の子を育てている労働者の仕事と育児の両立が容易になるように設けられたものです。
ただし、事業者に対して、テレワークが困難な業務に就いている労働者を、
テレワークが可能な職種へ配置転換することや、テレワークができる職種等を
新たに設けることまで求めるものではありません。
6 公表義務適用拡大
令和5年4月1日以降、従業員数1000人超の企業は、年1回、
男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を公表することが
義務付けられていましたが、今般、公表義務の適用範囲が拡大されました。
従業員300人超の企業は、年1回、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を公表しなければなりません。令和7年4月1日の施行に伴い、公表義務が課せられた企業は当然のことですが、
公表義務がない企業であっても、男性の育児休業等の取得率を公表し、
ワークライフバランスがとりやすい職場であることを知ってもらうことも重要です。
7 最後に
育児・介護休業法が、頻繁に改正されるのは、仕事と育児・介護の両立が、
とても大変であり、かつ非常に重要だからだと考えられます。
使用者の立場としても、幼い子供がいたり、
家族を介護したりしている従業員に配慮し、必要な支援をすることが望ましいです。
仕事と育児や介護の両立がしやすい職場となれば、従業員の離職率も減少すると考えられますし、
従業員の満足度も高まると思いますので、育児・介護休業法の施行を機に、
そのような職場づくりを目指したいものです。
就業規則の改訂等、法律家の支援が必要なこともあると思いますので、
顧問弁護士等の弁護士に、お気軽にご相談ください。