2025年06月20日

【お役立ちブログ】情報流通プラットフォーム対処法とは?

情報流通プラットフォーム対処法の概要

令和7年4月1日、 情報流通プラットフォーム対処法 が施行されました。

正式には

 「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」 

という長い名前がついています。

その名前のとおり、ネット上で誹謗中傷などが発生した場合の手続きの流れなどを定めた法律です。

これまでの法律(旧プロバイダ責任制限法)を改正するかたちでつくられたのですが、

誹謗中傷はSNSや匿名掲示板などを中心に行われているものの、

これまで投稿の削除についてはそれぞれのサイトに委ねられていてルールが定められておらず、

十分に救済されないことが問題視されていました。

そこで、増加する誹謗中傷被害を防止するため、大規模なプラットフォームに対して、

投稿の削除に関し迅速かつ適切な対応を義務付ける定めが置かれることになりました。

この法律で定められたのは、大規模なプラットフォームサイトの運営事業者に対して、

 ①対応の迅速化  ②運用状況の透明化 の2つの措置を取ることが義務付けられました。

それぞれどうなっているのか、解説したいと思います。

 

適用される事業者

適用の対象になる事業者ですが、法律上は「大規模特定電気通信役務を提供する者として、

総務大臣に指定された事業者」とされています。

つまり、大規模な掲示板やSNSなどの、たくさんの人が発信することができる

プラットフォームサイトを運営している事業者のうち、適用される事業者を政府が指定していく、

ということとされています。

今のところ、1ヶ月あたりのべ1000万人以上が利用するか、1ヶ月あたりのべ200万人以上が

発信するようなサイトが対象とされています。

将来的に変更される可能性はあるものの、現時点ではかなり規模が大きいものに限定されているようです。

 

3 対応の迅速化の措置

義務付けられるようになった措置の1つとして、対応の迅速化の措置があります。

内容としては主に以下の4つが定められました。

 

(1)削除の申出を受け付ける方法の公表

まず、サイトを運営する事業者は、サイトに投稿された誹謗中傷などの不適切な投稿記事について、削除を申請する方法を決めて、これを公表しなければならない、と義務付けがされました。
また、申請方法の設定も、

 ①ネット上での申出を可能とすること   ②申出者に過重な負担を課さないこと   ③申出を受けた日時が、申出者に明らかとなること  といった条件を守らなければなりません。

 

(2)投稿についての調査

サイトに投稿の削除の申請があった場合は、申請対象の投稿記事について、

不当な権利侵害にあたるのかどうか、すぐに必要な調査をしなければなりません。

 

(3)調査専門員の選任・届出

削除するかどうかの判断を適切に行うには、専門的な知識・経験が必要です。

そこで、投稿が不当な権利侵害にあたるのかどうかの調査のため、

十分な知識経験を有する調査専門員を選任しなければなりません。

 

(4)申請者への通知

削除申請された投稿についての調査の結果に基づき、

その投稿を削除するかどうかを判断することになります。

その判断について、 原則として申出を受けた日から14日以内に、削除をしたあるいは削除しなかったこととその理由を説明の上、申請者に通知しなければならない 、とされました。

 

運用状況の透明化

義務付けられるようになった措置のもう1つは、運用状況の透明化の措置です。

内容としては主に以下の3つが定められました。

 

(1)削除の基準の設定と公表

サイト事業者が投稿を削除するかどうかは、原則として、事前に公表した基準に沿って判断されなければならない、とされました。ただし例外的に、法令上の義務に基づく場合や、緊急に削除する必要がある場合などでは、基準に沿っていなくとも削除することが可能です。
また、削除の基準は、わかりやすく、かつ、できるだけ具体的で、法令と整合するものでなければなりません。

 

(2)発信者への通知

投稿を削除したときは、削除したこととその理由を、投稿者にすぐ通知するか、または、投稿者が簡単に知り得る状態に置くようにしなければならない、と定められました。
削除が、サイトの基準に基づく場合には、削除の理由として、基準のどの規定に基づいて削除したのかを説明しなければなりません。

 

(3)実施状況等の公表

サイト事業者は、毎年1回、下記のような事項を公表しなければなりません。
 ①削除の申出の受付の状況   ②削除するかどうかに関する、申請者への通知の実施状況   ③削除した場合における、投稿者への通知等の措置の実施状況   ④その他削除の実施状況  ①~④の事項についてのサイト事業者自身の評価

 

罰則など

総務大臣は、サイト事業者側に対して、業務に関する報告を求め、

違反行為があれば勧告・命令をすることができます。

命令への違反に対しては、1年以下の拘禁又は百万円以下の罰金が予定されています。

また、法人の両罰規定(1億円以下の罰金)がありますので、

 個人だけでなく会社にも小さくない制裁が科される可能性があります。   また、届出や報告をしなかった、虚偽の届出や報告をした場合についても、罰金の制裁があります。 

まとめ

以上のように、ネット上の誹謗中傷に対して、サイト事業者に削除のための体制を

構築することが求められるようになり、不備があれば制裁がありえます。

それだけ、ネット上の誹謗中傷の件数が多数であり、救済が急がれているということでもあります。

情報流通プラットフォーム対処法により削除の対応が必要になるサイトは、

今のところかなり限られると考えられますが、対象は拡大する可能性があります。

SNSや掲示板サービスを提供されている会社は、念頭に置いておくのがいいと思います。

SNSや掲示板サイトを使用する側としては、こういった規制により、削除がよりスムーズになる可能性があります。

投稿の削除について気にかかっておられる方は、ひとまず弁護士に相談されることをおすすめします。

 

2025年06月20日 | Posted in お役立ちブログ, 企業法務のお役立ちブログ, 森長大貴の記事一覧 | | Comments Closed 

関連記事