2020年09月24日

【企業法務】業種別パワハラの傾向と対策

今回は、業種別パワハラの傾向と対策と題して、パワハラの温床となりやすい職場や業種には、どのような傾向があるのか、どのような対処をすればよいのかについて、見て行きたいと思います。

過去の裁判例を見てみると、様々な業種でパワハラが起こっており、パワハラと無関係な業種や職場はないとも思えます。どのような業種で働いていたとしても、パワハラ防止策を徹底するとともに、自らの行為がパワハラにならないかを、省みる必要があります。

そうは言っても、パワハラが発生して、裁判にまでなった案件を見る限り、一定の傾向が見て取れます。すなわち、

①閉鎖的(良い悪いは別として、世間一般とは異なった常識や価値観がある。)で外部との交流が少ない業種
②厳しい上下関係がある業種など職場の風通しが悪い職場
③極端な成果主義がとられている業種
④過重労働が常態化しやすい業種

以上のような業種では特にパワハラに注意する必要があると思われます。

1 閉鎖的で外部の目が届きにくい業種


パワハラ等のハラスメントは悪であり、撲滅しなければならないという価値観は、時とともに広まっており、どの業種、どの職場においても、パワハラ防止が言われていると思います。
そうは言っても、その業種の昔ながらの常識や価値観に照らして、この程度なら許されるだろう、これくらいなら当然だと思っていることが、世間の常識に照らすとパワハラになってしまうこともあります。

良い悪いは別として、世間一般の常識や価値観と異なる常識や価値観がある業種では、世間一般の常識との乖離のために、知らず知らずに世間で言うパワハラをしてしまうことがあるのではないでしょうか。

また、職場内の人員が固定されてしまうと、その職場でパワハラという問題が生じた際に、対処が難しく、被害が長期化しやすいと考えられます。現に、裁判例を見てみると、人員が固定され、外部の目が届きにくい業種や職場で起こった事件が散見されます。
外部の目を入れる、人員を流動化させる、常に新しい価値観に触れるといったことは、パワハラ防止のみならず組織の活性化という観点からしても、有益だと考えられます。

2 厳しい上下関係が存在する業種


職場内における規律と秩序を守るため、しっかりとした上下関係を維持することは必要です。とはいえ、残念ながら、厳しすぎる上下関係が、パワハラの温床となってしまうことがあります。
例えば、パワハラが認められた裁判例のなかには、自衛隊内のパワハラ事件もありましたが、厳しい上下関係も要因の一つとなっていたと考えられます。

また、派遣社員が、派遣先の正社員からパワハラを受けていたという裁判例もあります。派遣社員と派遣先の正社員との力関係の差が、パワハラの要因となってしまうことも考えられますので、労働条件等で弱い立場にある従業員に対しては、一層の配慮が必要でしょう。
よく言われているように、職場の風通しを良くすることが、パワハラ防止に限らず、生産性を高めるために必要だと思います。

3 極端な成果主義がとられている業種


極端な成果主義がとられている企業において、パワハラが問題となった事件もあります。
ノルマや成果主義は、必要だと思いますが、それが過酷であるため、従業員が追い詰められてしまうのも考えものです。

4 過重労働が常態化しやすい業種


過重労働が常態化している業種、職場も、パワハラが発生する危険が高まっていると言えます。
上司と言えども、人間である以上、過重労働で、精神的にも肉体的にも疲弊し、心身ともに余裕がなくなってしまうと、部下に対して、不必要に厳しく接してしまうこともあるのではないでしょうか。
また、過重労働で、従業員全体に疲労やストレスが蓄積している職場では、些細なことでもトラブルに発展しやすいと考えられますので、パワハラに限らず従業員間のトラブルが起こりやすい傾向にあると思われます。

過重労働のために従業員が亡くなってしまった事件を見てみると、亡くなられた従業員は、労働時間が長いために疲弊していたのみならず、ハラスメントにより精神的に追い詰められていたこともあります。
長時間労働が常態化しやすい業種というのもあろうかと思いますが、そのような職場においては、労働時間の管理のみならず、従業員のメンタルケアにも配慮する必要があります。
過重労働を減らし、従業員の負担やストレスを軽減し、働きやすい職場にすることこそが、上司や役員の責務でしょう。

 

今回は、業種別パワハラの傾向と対策ということで、パワハラの要因を検討してみました。
結局のところ、パワハラの防止対策は、これまでの記事でお伝えしてきたように、従業員の皆が輝ける望ましい企業風土と職場環境の維持形成に尽きると思います。
上司や役員のみに、望ましい職場環境の維持形成を委ねるのではなく、同じ職場で働く全員が、よい職場づくりを意識したいものです。

私自身も、自分が置かれた現在の立場で、良い職場環境に寄与できているかどうか、反省し、向上したいと思います。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。

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