【民法改正】協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
【事例】
造園工事業者であるA社は,
得意先のB社から,造園工事の依頼を受けて,
造園工事を行いました。
しかし,B社から造園工事の代金の支払いがなく,
そのまま代金債権の時効完成直前となりました。
時効完成の直前になってから,B社からA社に対して,
造園工事の代金を支払う意思はあるが,
金額については協議したい旨の申し入れがありました。
A社としては,得意先のB社とは
今後も取引を継続したいと考えており,
今回の造園工事の代金については,
裁判をせずに話し合いによって解決したい
と考えています。
1 現行民法では
現行の民法では,当事者が債権額について交渉しても,
時効完成を阻止する効果はありません。
そのため,時効完成の直前になると,
時効の完成を阻止するだけのために,
訴訟の提起などをしなければならない
という問題がありました。
2 民法改正によってどうなるか
(1)協議を行う旨の合意による時効完成猶予の新設
上記1のような問題があったため,
改正法で,協議を行う旨の合意をすることで,
時効完成を猶予するという規定が設けられました
(改正民法151条)。
この規定により,当事者が合意をすれば,
協議を継続している一定の期間は
時効の完成が猶予されるので,
債権者は,時効の完成を阻止するためだけに
訴訟提起などをする必要がなくなります。
もっとも,合意の有無などについて
後で争いになるのを防ぐために,
協議の合意が書面によってされることが
要件となっています(改正民法151条1項)。
(2)時効完成が猶予される期間
時効の完成が猶予される期間は,
以下の①から③までの
いずれか早い時までの間とされています。
①協議の合意があった時から1年を経過した時
②合意の中で1年に満たない期間を定めたときは,
その期間が経過した時
③当事者の一方から相手方に対して
協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは,
その通知の時から6か月を経過した時
(3)協議を行う旨の再度の合意
一度協議を行う合意をした後で、
再度協議を行うことを合意すると,
さらに時効完成の猶予を続けることができます
(改正民法151条2項)。
もっとも,協議を行う旨の合意を繰り返しても,
無期限に時効完成が猶予されるわけではありません。
協議の合意によって時効完成が猶予されるのは,
最長でも,時効の完成が猶予されなかったとすれば
時効が完成すべき時から5年間です。
時効期間に関する改正については、
以前のコラムで解説しております。
時効期間についての詳細は,
こちらのURLからご覧下さい。
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顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。