2024年12月16日

【お役立ちブログ】株式併合によるスクイーズアウト・流れと進め方を解説

株式会社を運営するにあたって、ときには他の株主と対立してしまうこともあります。

そこで今回は、株式併合をすることで行う、少数株主のスクイーズアウトについて解説します。

1 スクイーズアウトとは?何のためにするのか?

スクイーズアウト(Squeeze Out)とは、直訳すると「締め出し」ということですが、少数株主の株式を強制的に買い取る等して、会社の株主から排除することです。

スクイーズアウトは、このようなケースでなされることが多いです。
①意思決定を迅速化・円滑化して自由に経営したい
②株主総会を省略して事務処理を軽減したい
③株式が分散するのを避けたい
④税制上のメリットがある場合がある

この中でも、とくに①は、株主との人間関係が悪化していることも多く、対応に悩まれる方が多いのではないかと思います。

スクイーズアウトにはいくつかの方法がありますが、今回はその中でも株式併合について解説します。

 

2 株式併合によるスクイーズアウト

株式併合は、複数の株式を1つの株式にまとめることです。

 

株式併合によるスクイーズアウトは、株式併合を行うことで、少数株主を1株よりも小さい株式(端株)の株主にしてしまって、端株を強制的に買い取る方法です。

 

例えば、1000株の株式を発行している株式会社で、

Aさん  70株
Bさん  20株
Cさん   5株
Dさん   5株

という株主構成の場合で、社長であるAさんと専務であるBさんだけを株主に残しておきたい、といったケースを考えてみましょう。

 

このような場合に、例えば、10株を1つの株式にまとめる株式併合を行います。そうすると、CさんとDさんの保有株式は、1株未満の株(端株)になります。

Aさん   7株
Bさん   2株
Cさん 0.5株
Dさん 0.5株

法律上、端株については、株主としての権利を行使できず、また強制的に買い取ることができることになっています。

 

この制度を利用して、株式併合により少数株主の株式を端株にしてしまい、強制的に買い取るのが、株式併合によるスクイーズアウトです。

以下では、株式併合によりスクイーズアウトを実行するまでの流れをみていきましょう。

 

3 株式併合の流れ

株式併合・株主総会招集の決定

まずは、どのような割合で併合するか、効力発生日はいつにするのか等、株式併合の内容を決めましょう。

 

また、株式併合のためには、株主総会の承認が必要ですので、株主総会の招集の決定をします。

 

事前開示書面の備え置き

株主併合に先立って、事前開示書面を作成し、これを会社に備え置かなければなりません。

事前開示書面の備え置きを始めるのは、株主総会の日の2週間前または株主に通知した日のどちらか早い日から、株式併合の効力発生日後6ヶ月を経過するまで、株式併合をする旨の事前開示書面を備え置きます(会社法第182条の2第1項)。

 

株主がその閲覧やコピーの交付を求めてきた場合には、これに応じられるようにしておかなければなりません。

事前開示書面に記載しなければならない事項は多く、以下のようなものが定められています(会社法182条の2第1項、会社法施行規則33条の9)。

・併合の割合
・効力発生日
・併合する株式の種類(種類株式を発行している会社のみ)
・効力発生日における発行可能株式総数
・会社の実質的支配者(過半数の株式を有する者を含みます。)以外の株主の利益を害さないよう留意した事項
・併合の割合等についての定めの相当性に関する事項
・最終事業年度の末日(最終事業年度がない会社であれば会社成立の日)の後に会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、その内容
・最終事業年度がないときは、会社成立の日における貸借対照表
・備置きを開始してから効力発生日までにオからクまでの事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

 

株主総会による株式併合の決議

株主総会の招集にあたっては、株主総会よりも一定期間前に、株主に対して招集通知を送ります。

いわゆる閉鎖会社の場合は、株主総会の日の7日前(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)までに、株主に対してその旨を通知しなければなりません(会社法第299条1項)。

株式併合の承認を得るには、株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です(会社法309条2項4号)。

株主総会では、株式の併合をすることを必要とする理由を取締役から説明しなければならないとされており(会社法180条4項)、株式併合に関し下記の事項の承認を得なければならないとされています(会社法180条2項)。

・併合の割合
・株式併合の効力発生日
・株式併合を行う株式の種類(種類株式を発行する会社である場合)
・株式併合後の発行可能総株式数

 

株主に対する通知または公告

株主総会での承認を得たら、すべての株主に対して、効力発生日の20日前までに、株式併合に関する詳細を記載した個別の通知を送付し、または公告を行います(会社法181条、同法182条の4第3項)。

公告は官報によると定めている会社が多いと思いますが、閉鎖会社の場合は、公告よりも個別に通知を送るほうが楽でしょう。連絡がとれない株主がいたとしても、株主名簿に記載された住所に宛てて通知すれば足りるとされています。

 

反対株主の株式買取請求

株式併合に反対する株主は会社に対して、自分が所有する株式のうち1株に満たない端数を、公正な価格で買い取ることを請求できます(会社法182条の4第1項)。

ただし、株式買取請求権を行使するには、株主総会までに株式併合に反対する旨を会社に通知するとともに、株主総会で株式併合に関する特別決議に反対しなければなりません(会社法182条の4第2項1号)。

また、株式買取請求は、株式併合の効力発生日の20日前から、効力発生日の前日までの間に行わなければなりません(会社法182条の4第4項)。

効力発生日から30日間は、株主と会社との間で買取価格について協議が行われ、決着が付かなければ、その期間満了後30日以内に、会社と株主のどちらからでも、裁判所に価格決定の申立てを行うことができます(会社法182条の5第2項)。

 

効力発生日を迎える

株主は、株主総会で決議された株式併合の効力発生日をもって、効力発生日前日に所有している株式数に、株主総会で決議した併合の割合を乗じた株式数の株主となります。

端株が生じる場合も、この効力発生日をもって、端株の株主となることになります。

 

事後開示書面の備え置き

効力発生日後遅滞なく、6ヶ月間は、会社に事後開示書面を備え置きます。事後開示書面の記載事項も多く、以下のようなものです(会社法182条の6第1項、会社法施行規則33条の10)。

・効力発生時における発行済株式の総数
・株式の併合が効力を生じた日
・株式の併合をやめることの請求に係る手続の経過
・反対株主の株式買取請求権に係る手続の経過
・その他株式併合についての重要な事項がある場合には、その事項

 

この事後開示書面も、株主に閲覧やコピーの請求権が認められています。なお、株式併合により締め出された少数株主も、事後開示書面の閲覧及び謄写を請求できます。

 

変更登記申請

発行済み株式数が変わりますので、効力発生日から2週間以内に、法務局で変更登記申請を行います。

 

裁判所への売却許可の申し立て

株式併合により生じた端株を買い取るために、裁判所に売却許可の申し立てを行います。裁判所から売却を許可されれば、会社は端株を自ら買い取ることが可能です。

なお、買取代金を交付する期限は、法令上は特に定められていませんが、あまり遅れますと新たな紛争の火種となりかねませんので、速やかに金銭の交付を実行すべきでしょう。

 

4 終わりに

ここまでみてきましたように、スクイーズアウトの手続きはかなり細かくてわかりにくい上、とくに追い出される株主とは対立するおそれもあります。反発があった場合には紛争に発展するリスクがありますので、1つ1つ適切にクリアしていく必要があります。

スクイーズアウトを実行していくことをお考えであれば、会社だけで実行するよりも、弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

 

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