自筆証書遺言の書き方と保管方法
これまで、自筆証書遺言(手書きで作成する遺言)を作成する場合、ワープロを使うことすら許されておらず、全文を手書きしなければならなかったため、大変な手間でした。
ですが、今回の相続法改正に伴い、自筆証書遺言が使いやすくなりましたので、自筆証書遺言の作成と保管方法について、お話ししたいと思います。
A これまでは、自筆証書遺言の全文を、自筆で書く必要がありました。ですから、ワープロやパソコンで作成したり、代筆してもらったりすることはできず、全文を手書きで書くことは、とても手間がかかりました。
そこで、今回の相続法改正により、自筆証書遺言の作成方法が簡略化されました。遺言書本文は、これまでと同様に、自筆で書く必要がありますが、財産目録については、自筆でなくとも有効となりました。
A 例えば、財産目録をパソコンやワープロで作成して、遺言書本文に添付するという方法が考えられます。パソコンで財産目録を作成することが大変だということであれば、登記簿謄本のコピーや通帳のコピーを添付する方法もあります。
また、これらの財産目録の各ページに、遺言者が自筆で署名し、押印する必要がありますので、ご注意ください。
A 必ずしも実印でなければならないというものではありません。
ただし、遺言書本文と、財産目録に別々の印鑑が押してあった場合、財産目録を別の人が作成したのではという疑義が生じてしまうリスクがありますので、遺言書本文と財産目録には、同じ印鑑を用いるのが安全でしょう。
また、法律上の要件ではありませんが、遺言書の本文と一体となっていることを明らかにするために、各ページに割り印をしておくのがいいと思います。
A 遺言書保管法という法律ができたため、自筆証書遺言を、法務局に預けて保管することができるようになりました。
これまでは、自筆証書遺言を書いた場合、自宅のタンスや金庫、仏壇にしまっておく、家族に預ける、弁護士等の第三者に預けるという方法で保管しておくことが考えられましたが、令和2年7月10日に遺言保管法が施行され、法務局に自筆証書遺言を預けることができるようになりました。
A せっかく、遺言者が自筆証書遺言を書いても、その自筆証書遺言が見つからないという問題があったからです。
弁護士等の第三者が自筆証書遺言を保管しており、相続人に対して、遺言があることを伝えていれば問題はないのでしょうが、遺言者の自宅に保管されていた自筆証書遺言が、誰にも発見されることなく、遺産分割が行われてしまうということもありました。
遺産分割の後で、自筆証書遺言が見つかったりするとトラブルのもとですし、そもそも、自筆証書遺言が発見されず、遺言を遺した方の意思が尊重されないということも、残念なことです。
そこで、遺言者の最終意思を記載した自筆証書遺言が、誰にも発見されないという事態を避けるべく、遺言保管法が制定されたのです。
自筆証書遺言は、簡単に安価に作成できる遺言ですので、その自筆証書遺言が使いやすくなったこと、保管制度ができたことは、望ましいと言えます。
とはいえ、法務局に自筆証書遺言を預ける際に、その自筆証書遺言の形式が適法かどうかの確認はできたとしても、その内容が妥当かどうかについて、専門家のチェックを受けることまではできません。
そのため、しっかりとした遺言を遺すという観点からすれば、費用の問題はありますが、今後も、公正証書遺言を作成しておく方法が安全だと言えます。
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。