2019年05月23日

【相続問題】配偶者・子どもがいない場合の相続例

ご相談の内容

Bさん(50代女性)は、長年、その耳鼻科(東海地方の個人医院)の女医のもとで看護師兼事務員として働いていました。

その女医さんは、名医として有名で、実は私も、まだ大学生のころ、慢性副鼻腔炎の手術をしてもらうなど、大変お世話になり、恩義のある女医さんでした。

私が司法試験に受かり、検事となった後も、またその後検事を辞めて弁護士になった後も、年賀状のやりとりもありました。

女医さんは、私が司法試験に受かったことを大変喜んでくれました。

この女医さんには、一時期ご主人がおられましたが、その後死別され、お子さんはおられませんでした。

有能な女医さんですから、お子さんがおられない、ということもあって、大きな資産を保有しておられました。

やがて女医さんは70代後半となり、その耳鼻科医院をやって行くのは難しくなって来ました。

その女医さんはやり手でありましたが、後継者はおらず、耳鼻科は閉鎖するしかありませんでした。

ところが女医さんには、男の兄弟が4人おられ、中には、やがて女医さんの築いた財産相続を目当てに急接近して来る人もいたようでした。

女医さんは、当惑し、遺産を誰に渡すかを遺言書で決めたい、と思うようになって、Bさんに相談したのです。

解決への道すじ

Bさんと相談しているうち、前から縁があった当事務所の弁護士(私)に遺言書作成を任せたい、ということになって、連絡がありました。

そこで私は、女医さんとBさんから、遺産相続をどうしたいのか、希望をお聞きしました。

その結果、4人の兄弟にもある程度は渡すが、ほかにお世話になった介護施設や大学病院にも渡したい、また、長年自分を支えてくれたBさんにも渡したい、とのことでした。

そこで、その意向に沿って遺言書の案を作成し、私が遺言執行者になり、公証役場でそれを公正証書遺言書にする段取りを整えました。

女医さんは相当高齢となり、その時点で既に医師を引退しておられ、病院に入院中でしたので、入院中の主治医から、遺言作成能力に問題はない(財産の管理能力がある)旨、診断書を作成してもらい,公正証書遺言が作成されました。

それから5年後、女医さんは静かに息を引き取られました。

私は、遺言執行者として,全相続人に対し、公正証書遺言書があることとその内容、及び、遺産目録を作成して、送付しました。

その上で、遺言書の通り遺産を分けました。

相続人の誰からも異論は出ず,Bさんも大変喜んで下さいました。

元気な間に遺言書を作成しておくことが大切です。

今でもその女医さんのことは忘れることはありません。

 

執筆者プロフィール
a弁護士 二木克明 >>プロフィール詳細
相続問題と労災事件に注力している。
相続問題は,年間相談件数44件(受任件数40件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
依頼者のお気持ちを大切にすることを心がけている。

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