2026年03月18日

【お役立ちブログ】カスハラから従業員を守るために

1 はじめに

市役所等の公的機関の窓口、コンビニやスーパーのレジ付近で、カスハラを警告するポスターなどの表示を見かけることがあると思います。また、従業員が、イニシャルだけが書かれた名札を付けていたり、名札を外していたりするのを目にすることもあるのではないでしょうか。

カスハラ対策を進めている企業が増えているように感じます。

カスハラの定義は、改正労働施策総合推進法によると、①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(顧客等)の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものによって、③労働者の就業環境が害されることとされています。

企業として、このカスハラから如何にして従業員を守るかを考え、対策を実行することは重要と考えられますので、今回は、カスハラ対策を取り上げたいと思います。

 

2 カスハラから従業員を守ろう

カスハラのために従業員が疲弊したり、心身の健康を害したりすること、果ては退職してしまうことは非常に残念なことですが、それらに至らなくとも、 カスハラ対応に時間と労力を奪われ、職場の生産性が低下する ということ自体が企業にとって損失です。

カスハラから従業員を守るべきであることは言うまでもありませんが、そのためには、企業として、 従業員をカスハラから保護するという方針を明確化 し、従業員に通知するとともに、 カスハラの相談窓口を定め、周知 する必要があります。

また、カスハラと思われる行為がなされたとき、どのように対応するかについても、職場内の具体的なルールを決めておく必要があります。

例えば、 同じ要求が一定時間繰り返されれば電話を置く 、顧客等から金品の要求があれば一人では対応せず 上司の同席を求める 、顧客等から大声を出されたり、乱暴な言葉遣いがなされたりしたら、 複数人で対応をする 等のルールを定めておき、万が一、このような事態が発生しても従業員がカスハラから逃れることができるようにしておくことが望ましいです。

 

3 カスハラと正当な意見との区別

顧客等からカスハラと思われる言動があった場合、企業として対応を決める必要があります。

カスハラの中には、要求や意見を伴わない単なる嫌がらせもあるため、これらは正当な意見と区別するまでもなく、カスハラになります。

問題は、正当な意見とカスハラになる不当なクレームを区別するところにあります。

そして、正当な意見と不当なクレームとの区別は、 ①顧客等からの要求の内容  ②要求の手段・態様 によって判断することが相当と考えられており、要求内容と手段・態様のいずれか一方あるいは双方が不当なものが、不当なクレームとして「カスハラ」になり得ます。

仮に顧客が要求する内容自体は妥当だととしても、 長時間居座る、日に何度も電話をかける、乱暴な口調を用いる、怒鳴る 等、要求の手段または態様が不当な場合は、カスハラに該当することになります。

 

4 顧客等からカスハラと疑われるクレームがあった場合の対応フロー

顧客等からカスハラが疑われる要望があった場合、正当な意見かクレームなのかを判定して、対応する必要があります。

その対応経過は、通常、以下の経過を辿ります。

①顧客等の要望を具体的かつ詳細に聴取し、
②必要な調査を行い、
③組織として判定し、
④顧客等に回答する

もし、顧客等の要望が正当な意見の場合、顧客等の要望を受け入れて対処することになります。

正当な意見ではなく、カスハラの場合は、 顧客等の要望に応じるべきではありません 。ただし、その場合、顧客等を説得しカスハラを止めさせることまでは難しいことがありますので、 同じ回答を反復して、膠着状態を作り出し、カスハラが終息することを現実的な目標 とすることが多いと思います。

5 組織としての対応の重要性

カスハラを行う顧客等に対しては、従業員個人としてではなく、 組織として対応することが重要 です。

組織として、対応方針を決定し、組織としての決定に従って、各従業員が対応します。顧客等と対応する従業員は、1人ではなく、 2人以上で対応することを原則 とします。電話対応は1人で行うとしても、個人の回答をするではなく、 組織として決めたことだけを回答 するだけにし、個人の意見を求められても答えないようにします。

また、顧客等の中には、従業員のミスにつけ込んで、従業員を叱責したり、過大な要求をしたりすることもありますが、 ミスをしてしまった従業員に顧客等の対応をさせるべきではありません 。心理的な負担を感じている従業員が対応を続けると、更なるストレスを受けることになるからです。

 

6 記録化の必要性

顧客等とのやり取りについては、 全て記録化することが望ましい です。記載にあたっては、事実と推測を分け、5W1Hが明確となるように詳細に記録化することが重要です。

面談時は、顧客対応を行う従業員の他に筆記係も同席します。電話は、 録音するとともに、電話があった日時・回数も記録 しておきます。

なお、面談や会話時の録音については、録音していることを顧客等に告げることなく、 録音しても差し支えありません 

ただし、録音することを告知するか否かは、録音する目的にもよります。顧客等の言動を牽制し、カスハラを防止したいのであれば告知し、 証拠の確保を主たる目的にするのであれば、秘密録音をすべきとき もあります。

7 最後に

顧客等がカスハラを止めず、正常な業務に支障が生じている場合等、法的権利が侵害されている場合、弁護士が介入し内容証明郵便を用いて警告したり、裁判所に 仮処分(面談強要禁止、架電禁止等) を申し立てたりすることもあります。

弁護士の介入や法的手続の利用は、 対応窓口を一本化できる という利点があり、従業員のストレスや職場の負担の軽減に繋がりますので、早めの段階から、対応の窓口を弁護士にすることも有益だと思います。

 これはカスハラではないかと悩まれ、従業員が対応に苦慮している のであれば、遠慮なく顧問弁護士等の弁護士に早期にご相談ください。

 

執筆者プロフィール

弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細

1981年滋賀県生まれ。

離婚問題や相続問題に注力している。

悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。

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