2020年04月23日

【新型コロナウイルス】新型コロナウイルスを理由とする解雇について

新型コロナウイルスの影響で経営が悪化したことを理由に従業員の解雇を検討せざるを得なくなった場合の問題について、Q&A形式で解説します。


Q1 飲食業界や観光業界をはじめとして、新型コロナウイルスの影響による経営難のため、従業員の解雇を考えざるをえないという場合があると思いますが、新型コロナウイルスの影響による経営難を理由とする解雇は認められるのでしょうか?
A1 まず、新型コロナウイルスの影響により売り上げが減少した場合は、業績が悪化したため、経営判断として行う解雇ですから、整理解雇にあたると考えられます。
Q2 それでは、整理解雇は、どのような場合に認められるのですか?
A2 整理解雇が認められるには、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人員選定の合理性、④手続きの妥当性という4要件が必要とされています。
Q3 整理解雇の4要件について、具体的な説明をお願いします。
A3
①人員削減の必要性とは、人員削減が経営上の十分な必要性に基づいていることです。
②解雇回避の努力とは、すぐに解雇と判断するのではなく、解雇を避けるために、役員報酬の削減、新規投資や新規採用の見送りなど、整理解雇という手段以外で経営を立て直す合理的な努力をしなければならないということです。
③人員選定の合理性とは、リストラすべき従業員を、客観的・合理的な基準で選ぶ必要があるということです。
④手続きの妥当性とは、従業員に対して、人員削減の必要性や解雇を避けるために行った努力の内容、解雇する従業員を選ぶ基準等について、説明して、話し合いをする必要があるということです。
Q4 新型コロナウイルスの影響による経営難を理由とする整理解雇について、使用者が気を付けるべき点は何でしょうか?
A4 新型コロナウイルスの影響によって業績が悪化した場合、特に飲食業や宿泊業は、売り上げが大きく減少していると思われますから、人員削減の必要性は認められることが多いと考えられます。
 ただし、解雇回避の努力を尽くさず、新型コロナの影響でという理由だけで安易に解雇をすることには問題があります。余剰経費の削減、余剰資産の売却、役員報酬の削減、新規投資の凍結、無駄な残業の防止、テレワークの活用、雇用調整助成金等の制度の活用といった方法を検討し、解雇を避ける努力を十分に行う必要があります。
Q5 飲食業界など、アルバイト従業員が多くいる職場において、人員整理を行う場合に注意すべき点は何でしょうか?

A5 アルバイト等の期間の定めがある労働者を、雇用期間の途中で解雇する場合は注意が必要です。期間の定めのある労働者を、期間の途中で解雇する場合には、労働契約法17条に定める「やむを得ない事情」が必要とされ、解雇の要件が厳格に判断されることになります。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。

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