2020年04月21日

【新型コロナウイルス】使用者の安全配慮義務について

今回は、新型コロナウイルス感染に伴う使用者の「安全配慮義務」というテーマを取り上げます。


Q1 従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、使用者が「安全配慮義務」違反を問われる可能性があると聞いています。「安全配慮義務」とはどのような義務でしょうか?
A1 使用者が、従業員に対して、従業員がその生命や身体等の安全を確保しながら働けるように配慮しなければならないという義務です。
 従業員が仕事中に怪我をしたり、働きすぎ等の理由で健康を害したりしないように、配慮すべき義務のことです。労働契約法5条には、「使用者は、労働者契約に伴い、労働者がその生命身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。
Q2 使用者は、新型コロナウイルスとの関係で安全配慮義務を怠ったと言われないために、どのような対策をとればいいでしょうか?
A2 従業員が感染しないように対策を練ると同時に、従業員が感染しているかどうかを早期に把握する必要があります。
 また、万が一、従業員が職場内にウイルスを持ち込んでしまった場合、職場内において感染が拡大しないように気を付ける必要があります。
 具体的な対策としては、在宅勤務・テレワークの推進、時差通勤の推奨、職場内の換気、多人数の会議を避ける等、様々な方法が考えられます。
Q3 使用者がとるべき対策について、参考にすべきものはないでしょうか?
A3 厚生労働省が作成した「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」が参考になります。

Q4 新型コロナウイルスに感染していることに気が付かずに出社してしまった従業員がいて、その従業員から、別の従業員に感染してしまった場合、使用者は安全配慮義務を怠ったことになるのですか?
A4 どれだけ配慮しても職場内の二次感染という結果を避けられないこともあります。そのため、従業員が職場内で感染したという結果が生じたからと言って、使用者が安全配慮義務を怠ったと断定することはできません。
 例えば、社内で感染者が発生したことを認識した後、その感染者の近くにいた濃厚接触者を全員休業させ、他の従業員が感染者や濃厚接触者と接触する機会をできる限り減らし、職場内を消毒するなどの措置をとったにもかかわらず、会社に残っていた従業員の中から、二次感染者が出てしまった場合にまで、使用者が安全配慮義務を怠ったとは言えないでしょう。
 ただし、職場内で感染した従業員に対して、休業手当の支払いが必要となることは、これまで述べてきたとおりです。
Q5 どのような場合に、使用者は安全配慮義務を怠ったとされるのでしょうか?

A5 社内で感染者が発生したことを認識したにもかかわらず、適切な措置や配慮を怠ったために、感染拡大に至った場合などです。

 例えば、感染者の近くにいた濃厚接触者に休業を命じることなく、漫然と会社に来ることを許していたために、その濃厚接触者から感染が広まった場合は、使用者の安全配慮義務違反となると考えられます。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。

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