【交通事故】高次脳機能障害と認定されるのはこんな場合
1 自賠責保険の審査対象
前回は,高次脳機能障害を自賠責保険が認定する基準についてご紹介しました。
今回は,どのような事実から,高次脳機能障害と認定されるかについてご説明します。
自賠責保険は,他の後遺障害の調査とは異なる,高次脳機能障害に関する審査体制を別に設けています。
全部が高次脳機能障害の審査に回るわけではなく,後記のような症例について対象とすると公表しています。
ここで挙げられている事情のうち1つでも満たせば,自賠責保険は高次脳機能障害かどうかの審査を行います。
2 認定のためのポイント
自賠責が公表している基準は,審査をするかどうかの基準であるため,これらの基準を満たしていても,高次脳機能障害とは認定されないこともありえます。
しかし,審査の基準から,自賠責保険がどのようなポイントに着目するのかがわかります。
これらの基準のうち診断書については,医師が患者の状態を診て判断した結果を書くものですから,重要なポイントをまとめると,以下のようになります。
2.CTやMRIなどの頭部の画像上,
脳が傷害を負い,病変したことが確認できるか
3.重度または軽度の意識障害が,一定期間継続していたか
4.高次脳機能障害の症状(知能低下,記憶障害など)が出ているか
自賠責保険は,これらの事情を調査し,高次脳機能障害かどうか判断していますが,これさえあれば認定されるというものではなく,いろんな事情を考慮して判断されます。
逆に,どれかが欠けると絶対に高次脳機能障害とは認定されない,というものでもありませんので,気になられたら高次脳機能障害にくわしい弁護士に相談されるのがよいと思います。
(「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」より。平成30年5月31日 高次脳機能障害認定システム確立検討委員会)
〇後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合(高次脳機能障害や脳の器質的損傷の診断名またはMTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名が記載されている等)
〇初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、MTBI、軽度外傷性脳損傷等の診断がなされている症例
〇初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、 認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経系統の障害が認められる症例
(注)具体的症状として、以下のようなものが挙げられる。
知能低下、思考・判断能力低下、記憶障害、記銘障害、見当識障害、注意力低下、発動性低下、抑制低下、自発性低下、気力低下、衝動性、易怒性、自己中心性
〇経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例
〇初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例
〇その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例
※MTBIとは:Mild Traumatic Brain Injury(軽度外傷性脳損傷)の略語です。「Mild(軽度)」とは意識障害が軽度ということを指します。
※JCSとは:Japan Coma Scaleの略語で,意識レベルを測るテストの一種です。
※GCSとは:Glasgow Coma Scaleの略語で,意識レベルを測るテストの一種です。
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。