2019年10月17日

【企業法務】わかりやすい働き方改革・罰則付きの時間外労働規制

1日8時間・1週間40時間の例外規定が労働基準法「36協定」

使用者は労働者に対し,休憩時間を除いて, 1日については8時間,1週間については40時間を超えて労働させてはならない とされています(労働基準法32条)。
これを超えて働かせた場合には,6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることになっています。

その 例外として規定されているのが,労働基準法36条の協定(いわゆる「36協定」) です。
36協定を締結し,これを労基署に届け出れば,協定で定めたところに従い,労働時間を延長したり,休日に労働させることができます。
36協定に関しては,以下の記事で詳しく解説しておりますので,ご参照下さい。

36協定とは① 基礎知識と限度時間について

従来の規制内容

従来,36協定に関しては,厚労省の告示で,1か月の時間外労働の限度を45時間,1年間の時間外労働の限度を360時間とすると定められていました。
もっとも,これは法律ではなく告示による規制で,この規制に違反しても罰則はありませんでした。

また,臨時的で特別な事情が生じた場合には,あらかじめ36協定に「特別条項」を設けておくことにより,事実上,無制限に時間外労働を行わせることができました。

改正の背景

このように,従来は,時間外労働の延長時間の限度について法律による規制はなく,36協定に規定しておけば,事実上,無制限に時間外労働を行わせることができました。

もっとも,近年,長時間労働は健康を害することが指摘され,過労死の事例も増えていました。
そのような中で, 時間外労働を抑制し過労死を防止するなどの目的で,時間外労働の上限規制に関する新たな規定が設けられることになりました 

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改正法の概要

(1) 原則的な限度時間(厚労省告示規制の法文化)

改正法では, 36協定による延長の限度は,1か月45時間まで,1年360時間までと定められました(特別条項による例外もあります) 
これは,従来厚労省の告示で定められていた規制を,法律(労働基準法)での規制に格上げしたものです。

(2) 特別条項によって延長する場合の上限(新たな規制の創設)

ア 規制の概要

改正法でも,36協定で特別条項を設けることにより,上記(1)の限度を超えて時間外労働をさせることができます。

しかし,改正法では,特別条項によって延長することができる時間外労働の上限が規定されました。これは,従来,法律にも厚労省の告示にもなかった規制です。

つまり,従来は,36協定で特別条項を設ければ,事実上,無制限に時間外労働を行わせることができました。
しかし,法改正後は, たとえ36協定で特別条項を設けても,無制限に時間外労働を行わせることはできず,法律で定められた限度でのみ,時間外労働をさせられることになります 

そして,後で述べるとおり,この時間外労働の上限規制違反については, 罰則が設けられています 

イ 具体的な規制内容

特別条項によって延長する場合の上限に関する具体的な規制内容は,以下のとおりです。

①1か月の「時間外労働」と「休日労働」の合計の時間数の上限
→100時間まで

② 連続する2か月,3か月,4か月,5か月及び6か月のそれぞれについて,1か月当たり「時間外労働」と「休日労働」の合計の時間数の上限
→80時間まで

③ 1年の「時間外労働」の時間数の上限
→720時間まで

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(3) 罰則

上記①から③のうち, ①及び②については,違反した場合に6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す という罰則規定が設けられています。

(4) 施行時期

労働時間の上限に関する改正法は,平成31年4月1日に施行されています。
ただし,中小企業に関しては,令和2年4月1日まで適用が猶予されます。(中小企業の定義については,こちらをご参照下さい。)

(5) 厚生労働省HPでの解説

上記でご説明した改正法の概要については,厚生労働省HPでも解説がされておりますので,ご参照頂けばと思います。

おわりに

以上が,時間外労働の上限規制に関する改正の概要です。

今回の改正により,法律(労働基準法)に時間外労働の上限規制が設けられ,さらに,規制違反には刑事罰が科せられることとなりました。
経営者の皆さんは,改正後の規制内容を十分に理解し,対応していく必要があります。

もっとも,改正後の規制内容は複雑で,分かりにくい部分もありますので,分からないことがあれば,弁護士にご相談されることをお勧めします。

執筆者プロフィール
弁護士紹介|臼井 元規弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細
1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。
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