2020年11月25日

取締役会議事録の意義と重要性とは?

ある程度規模が大きく,役員が複数名いる会社の中には,取締役会を設置している会社もあります。
では,取締役会の議事録にはどんなことを記載するのでしょうか。

今回は取締役会議事録の意義とその重要性について解説したいと思います。

1 取締役会議事録とは?


取締役会とは,その会社の取締役全員により組織される会社の機関で,3ヶ月に1回は会合を開催するとされており(会社法362条2項),会社の業務の執行や監督など,経営上重要な判断がされます。取締役会議事録は,取締役会でどのようなことが行われたのかを記録した議事録で,取締役会が開催されたときは,議事録の作成をする必要があります。

この取締役会議事録は,代表取締役の選任や退任の登記をする際の必要書類となったり,金融機関からの高額の借入の際に求められたりすることもあります。

これは,取締役会議事録が,会社の機関が正式に意思決定をしたことを示す重要な証拠であるため,法務局や銀行が会社からの申請について判断する根拠にしているからです。

また,会社が間違った判断をしたなどの場合に,取締役会できちんと議論したのかどうかを株主がチェックし,場合によっては,株主が役員個人の責任を追及する根拠資料としても使用されます。

2 どんなことを書くのか?


取締役会議事録に書かなければならない内容は,法令で指定されています(会社法施行規則101条)。非常に細かくて読みにくいのですが,基本的な記載事項は以下のとおりです。

① 日時・場所(他の場所から出席した役員がいる場合は,その出席方法)
② 特別取締役による取締役会であるときは,その旨
③ 取締役以外の者の請求等により招集されたものであるときは,その旨
④ 議事の経過の要領と,その結果
⑤ 議事につき特別利害関係のある取締役がいるときは,その氏名
⑥ 監査役,会計参与等が述べた意見また発言の概要
⑦ 出席した執行役,会計参与,会計監査人,株主の氏名・名称
⑧ 議長がいるときは,議長の氏名
⑨ 取締役会決議があったものとみなされた事項の内容
⑩ 取締役会への報告を要しないものとされた事項がある場合,その内容と日付,議事録作成の職務を担当した取締役の氏名

3 どのように作成するのか?


取締役会議事録は,書面または電磁的記録で作成しなければならないとされています(会社法369条3項および4項)。
この電磁的記録というのは,要するに文書ファイルのデータのことですが,法令では,ディスクその他の方法により記録しておくことができる物に情報を記録するとされています(会社法施行規則224条)。つまり,CD-Rなどに保存しておく形式で作成する必要があるとされています。

書面で作成する場合には,出席した役員は議事録に署名または記名押印する必要があります。現実には,いちいち自分でサインするよりも,議事録をパソコンで作成した際に出席役員を書いてしまって,後で印鑑を押すほうが簡便ですので,記名押印が多いでしょう。

電磁的記録で作成する場合には,署名または記名押印に代わる措置を取らなければならないとされており,近年では電子署名が多くなってきているようです。

作成時期については,法令上とくに決まりはありません。とはいえ,放置するのはあまり望ましくありませんし,商業登記の変更の申請が2週間以内とされているため(会社法915条1項),登記申請に取締役会議事録を使用する場合は,これに間に合うように作成する必要があります。

4 備え置きと閲覧


取締役会議事録を作成して登記の申請などに使用したとして,取締役会議事録の役割は終わりではありません。取締役会議事録は,取締役会の日から10年間,本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。

会社の株主は,一定の会社を除き,会社の営業時間内であればいつでも取締役会議事録の閲覧謄写を請求できることになっています(会社法371条2項)。
これらの備え置きをしていなかったり,正当な理由なく閲覧謄写をさせなかったりした場合には,100万円以下の過料が課されることがありますので(会社法976条4号および8号),注意する必要があります。

このように取締役会議事録に関係する法令の定めは難解ですので,どうすればいいか迷われたら,弁護士までご相談ください。



執筆者プロフィール
弁護士紹介|森長 大貴弁護士 森長大貴 >>プロフィール詳細
1987年福井県生まれ。
債務整理やインターネットトラブルに注力している。
相談に来られた方が叶えたい希望はどこにあるのか、弁護士である前に1人の人間として、その人の心に寄り添って共に考えることを心がけている。

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