2019年06月20日

「これってセクハラ?」とビクビクしている皆さまへ・セクハラ事例から学ぶ境界線

セクハラはどこからなのか?セクハラ事例から学ぶ境界線

「それって、セクハラ!訴えてやる!」と言われるのではないかと思うと、女性従業員にどう声をかけてよいか分からないという経営者の皆さまへ。
「セクハラ」とは、「相手の意に反する行為」だから、相手に嫌だと思われれば何でもかんでもセクハラなんだと思っておられた方、いらっしゃいませんか?

サービス残業を強制されている

最近では、褒め言葉でさえもセクハラと言われて、女性に嫌われないかとビクビクしている男性諸氏の姿が見えてきます。
挨拶と褒め言葉は人間関係の潤滑油のはずなのだったのに、と。

内閣府の啓発ポスター

「痩せてきれいになったんじゃない?」
「今日の服かわいいね。俺、好みだな」
これは内閣府のセクハラ防止啓発ポスターに掲載されている「セクハラ」の例です。
ポスターはこちらのリンクからご覧頂けます。
ポスターのモデルとなった俳優さんも「えっ?これもセクハラ??」と戸惑ったそうです。

 

褒めてもダメ?「セクハラ」の要件

「痩せてきれいになったんじゃない?」
褒めているのに、なぜこれが「ハラスメント(嫌がらせ)」と言われる可能性がある言動とされているのでしょうか。
こうした言葉をかけられて不快に感じる女性がいるということです。
でも、本当に褒めることが問題なのでしょうか。
男女雇用均等法は、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動が行われ、女性労働者の対応によりその労働条件につき不利益を受けること、またはその性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることをセクハラと定義しています。
前段の「職場において行われる性的な言動で女性労働者の対応によりその労働条件につき不利益を受けること」を対価型セクハラ
後段の「職場において行われる性的な言動で当該女性労働者の就業環境が害されること」を環境型セクハラと呼んでいます。
環境型セクハラは、①職場において②相手の意に反した③性的な言動④就労環境の悪化が要件となります。
法律相談なら石川県金沢市の弁護士法人「兼六法律事務所」の解決事例

「痩せてきれいになったんじゃない?」はセクハラ発言?

「痩せてきれいになったんじゃない?」いう発言が、職場で(①)、相手の意に反して(②)行われたとして、どうしてこれがセクハラになるのでしょうか。
ず、「性的な言動(③)」にあたるかどうかを見てみましょう。
この発言は、単に「痩せた」という事実を告げているだけなくて、その結果「きれいになった」という容姿に対する評価が含まれている表現です。
ですから、「性的な言動」と考えられる場合も多いと思います。
次にこの発言によって「就労環境が悪化」(④)するとはどういうことでしょうか。
こうした発言によって言われた本人や聞いている周りの人たちの労働意欲が低下したり、能力が発揮できなくなる、というような効果があれば、就労環境が悪化したといえると思います。
ということは、いくら相手の意に反する(②)からと言って、一度だけ発した言葉によって「就労環境が悪化」させるセクハラ行為とは、多くの場合はいえないということです。

「痩せてきれいになったんじゃない?」がセクハラになる場合

けれども、次の例のような場合にはセクハラと考えられる場合もありそうです。
みんなの前で特定の人に対し何度も「痩せてきれいになったんじゃない?」と言う場合。
「痩せてきれいになったね。今度デートしようよ」と、何度も誘う。
上から下までジロジロと見て「痩せてきれいになったね」と言う。
一つずつ検討してみましょう。

みんなの前で特定の人に対し何度も「痩せてきれいになったんじゃない?」と言う場合

これは、特定の人の容姿を注目しているということを示す言動でもありますし、痩せている女性がきれいというその人の価値観や好みを周囲に押し付けることにもなりますので、言われた本人に強い嫌悪感を抱かせるだけではなく、周囲の痩せているとは言えない女性を不快にすることもあるでしょう。
その場合にはセクハラとされる場合もあると思われます。

「痩せてきれいになったね。今度デートしようよ」と、何度も誘う。

もちろん、その女性に、女性として魅力を感じていっていることは否定できません(③)。
こうした声がけをするのが初めてで、相手の女性に嫌われているのを知らなかった場合であれば、たった一度の誘いで「就労環境が悪化した」(④)とは認められない場合も多いと考えますが、何度も誘えばセクハラと認定される場合も多くなると思います。
特に、男性上司が、女性部下が誘いを断れないと分かったうえで立場を利用してデートに誘う、あるいは女性部下が断っているのに執拗にデートに誘う行為は、ハラスメントの一環として解される可能性は十分にありますので、気をつけてください。

上から下までジロジロと見て「痩せてきれいになったね」と言う

容姿を評価することで性的な言動(③)であることは間違いないのですが、プラスして上から下までジロジロと品定めをするように眺めることも性的な言動(③)であり、時に相手に威圧感を与える行為です。
この場合は、就労環境を悪化(④)させ、セクハラと見なされる場合も多いと思われます。

「今日の服かわいいね。俺、好みだな」はセクハラ発言?

「今日の服かわいいね。俺、好みだな」と、職場で(①)、相手の意に反して(②)言われた場合にも基本的には同じように考えられると思います。
これは、決してかわいいキャラクターのついた服をかわいいと言っているわけではありません。
その女性が着ている服が自分の好みにあうかどうかを評価しているので性的な言動(③)といえなくはありませんが、仮にその発言が相手の意に反する(②)からと言って、一度だけ発した言葉によって「就労環境が悪化」させるセクハラ行為とは、多くの場合はいえないということです。
けれども、先に見た通り、次の例のような場合にはやはりセクハラと考えられる場合もありそうです。
・特定の服装(露出の大きな服やミニスカート、ボディラインがハッキリ出る服)に対して「「今日の服かわいいね。俺、好みだな。」と繰り返し言う。
・「今日の服かわいいね。俺、好みだな。今度デートしようよ」と、何度も誘う。
・上から下までジロジロと見て「今日の服かわいいね。俺、好みだな。」と言う。

女性の意に反したら何でもセクハラ?

最後に、女性に「キモ~い!」と言われてしまえば、相手の意に反したハラスメントなのでしょうか。
言葉を変えるなら、ハラスメントか否かを決めるのは、女性の一方的な認定によるものといってしまって良いのでしょうか。
そう言い切る論調があることは否定しませんが、私は、決してそうではないと考えています。
問題になっている発言または行為によって職場環境が悪化したと言えるか(④)は、発言や行為そのものの相当性、社会的に許される範囲か否かも考慮されるべきです。
日頃、痩せる努力を公言していた相手に対して「痩せてきれいになったんじゃない?」と発した一言で、直ちにセクハラとは言えないと考えます。
逆に、男性の年齢や身体的な特徴をあげつらい「キモ~い!」と陰口を言うことは、女性から男性へのセクハラと言えなくもありませんので、これも注意が必要です。
互いに節度を持って接することが大切ですね。

まとめ

このように、内閣府のポスターにあげられた言葉は、これだけで直ちにセクハラといえない場合が大半だと思います。
しかし、特定の場合にはこうした発言もセクハラとされる場合もあるので気をつけろという意味で注意を促されているのではないでしょうか。
互いを尊重しながらも、あまり萎縮せずに、気軽に言葉を掛け合える職場作りを心がけて頂きたいと思います。
それこそが、労働者のやる気を引き出す職場だと思うからです。
執筆者プロフィール
弁護士紹介|柴田 未来弁護士 柴田未来 >>プロフィール詳細
北海道生まれ。
アメリカ留学や阪神大震災を経て,人生観が変わった経験を持つ。
弁護士になってからは著作権法の改正活動や通訳・翻訳などの幅広い活動を行ってきた。
平坦な人生ではなかった自身の経験を生かし人生の困難に寄り添う弁護を目指している。
現在は「夫婦問題」「成年後見」「海外案件」に注力している。
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