2024年01月29日

【お役立ちブログ】従業員の採用と退職に関するトラブルと回避方法

1 はじめに

少子高齢化の進展により、労働世代の人口減少に歯止めがかかりません。様々な業界において、人材が不足し、採用難に頭を悩ませている事業主の方も多いと思います。

採用難の時代ではありますが、誰でも彼でも採用する訳にはいきません。会社を支えてくれる人材を採用できるように心掛けるべきですし、採用に伴うトラブルが生じないように気を配る必要があります。
また、折角採用して、大切に育てた従業員であっても、会社から離れていくこともあります。

縁あって、同じ職場で働いていた者同士が、紛争の当事者となることも不幸ですので、退職に伴うトラブルも、事前に回避できるように対処しておくことが望ましいです。

2 従業員の採用に関して気を付けること

(1)人材紹介会社

採用難の世相を反映しているのでしょうか、人材紹介会社を利用して、人材を採用する会社が増えています。また、数多くの人材紹介会社があり、テレビのCMやインターネット広告で見ない日はないくらいです。
会社に適した人材が簡単に見つからないからこそ、人材紹介会社を利用してよい人材を採用したいと思うのも当然ですが、人材紹介会社を利用し、一定の費用を投下して採用をするからには、失敗がないように、慎重に採用を行いたいものです。

人材紹介会社には、希望する人材について、一定の条件を伝えることができますが、条件を伝えたとしても、会社が求めている能力・経験・実績を有する人材を採用できるとも限りません。また、一定の経験と能力などを有していたとしても、その人材が、職場にフィットするかどうか、働きだすまで分かりませんので、折角採用しても早期に退職してしまうかもしれません。さらに、人材紹介会社の紹介を受けて、採用したところ、人材紹介会社から聞いていた職務経歴や実績と違ったということもあり得ます。
採用した人材が早期に離職してしまったり、採用した人材の技能や経験が思いのほか不足していたり、職務経歴等に若干の齟齬があったとしても、人材紹介会社に支払うべき報酬の負担が生じる可能性があります。
人材の採用及び採用後の育成の責任を負うのは、雇った事業主ですから、人材紹介会社からの情報を鵜呑みにすることは望ましくはありません。
会社においても十分な調査を行い、疑問点や不明点があれば確認し、時間をかけて面接を行い、場合によっては試用期間も設けたうえで、その職場に合った人材かどうか、活躍してくれるかどうかを見極める必要があります。

(2)無料求人広告業者

また、最近、無料求人広告業者とのトラブルも増えています。皆様も、電話やFAXで、求人広告を無料で出しませんかという勧誘を受けたことはないでしょうか。
勧誘を受けて、無料だからと思って、申込みのFAXを送ってしまったところ、実際は、最初の数週間は無料ですが、継続すると有料になると記載されており、いつのまにか数週間が経過し、解約をしないままに広告掲載料を請求されてしまうケースがあります。

無料求人広告の勧誘をしてくる業者には、様々なものがありますので、本当に無料かどうか、自動継続の条件になっていないか注意する必要がありますし、そもそも無料求人広告業者に依頼する必要があるかどうかから検討する必要があると思います。

(3)リファラル採用

人材採用にはコストがかかるということで、現在働いている従業員の友人や知人を紹介してもらい、採用するというリファラル採用が見直されています。

実際に会社で働いている従業員は、この職場がどんな雰囲気の職場で、どんな人がこの職場に合うのか、どのような仕事をしており、どのような能力や経験が必要なのかを知っているはずですので、この職場に合いそうな人を見つけることができます。
また、現在働いている従業員から声をかけてもらえば、この職場に興味を持って、面接に来てくれる可能性が高まります。

ただし、リファラル採用は、「コネ採用」ではありませんので、従業員からの紹介だからと言って、採用基準を甘くすべきではありません。面接に来た方が、この職場が求める人材かどうか、職場に合いそうかどうかを見極めたうえで、採用する必要があるのは当然です。

3 従業員の退職に際して気を付けること

(1)退職代行業者

次に、従業員の退職に伴うトラブルについてですが、近年特徴的な事情として、退職する従業員が、退職代行業者に依頼をすることがあります。
退職代行業者からの連絡があった場合、事業主としては、まず、その退職代行業者は何者か、交渉の権限があるのか否かを把握する必要があります。
相手方となる退職代行業者が、弁護士事務所や労働組合の場合は、交渉権限がありますので、その退職代行業者と交渉をして頂いて構いません。
これに対して、交渉権限のない場合は、退職の意思表示を伝える使者に過ぎません。退職代行業者と退職に関する条件を交渉することはできませんので、退職代行業者は、書類や連絡のやりとりの窓口にしかなりません。

そうは言いましても、退職代行業者に依頼をしているということは、退職を希望する従業員が、会社とはやり取りをしたくない、あるいはやり取りできない状態にあるということですので、その従業員とのやり取りは困難であると考えられます。そのような場合には、退職代行業者が、やり取りの窓口となってくれると助かることもあり得ますので、退職代行業者を使って伝えてきた従業員の要望が、例えば離職票を発行させて欲しいとか、私物を返して欲しい、引継ぎ後に有給休暇を消化させて欲しいといったものであれば、応じればよいと思います。

(2)情報利用について

また、退職した従業員が、同業他社に就職したり、同種事業を開業したりすることもあれば、勤務していたときに知り得た顧客情報等の情報を流用することもあり得ますので、この点に関しても留意しておく必要があります。

個人情報保護やサイバーセキュリティ上の問題も否定できません。退職した従業員が、会社から持ち出した情報を流出させたというケースもあるのです。

そのため、転ばぬ先の杖として、普段から、適切に情報管理をしておき、各従業員に不必要な情報を扱わせないようにしておくことが望ましいです。また、事前に、競業避止義務や秘密保持義務を負う旨の誓約書等に署名押印を求めておくとともに、退職時には機密情報を持ち出していないかを確認することも重要です。間違っても、辞めた従業員に、会社が支給したパソコン等の電子端末を持たせたままにしたり、会社のグループウェアにアクセス可能な状態にしておいたりしてはいけません。

とりわけ、機密情報に接することができるような重要な立場の従業員が辞める場合や会社との関係が悪化して従業員が退職する場合には、競業避止義務違反がなされないか、会社の情報が不正に利用される虞がないか、特に気を付ける必要があります。

4 最後に

従業員が辞める際、辞めた後のトラブルについて、弁護士が相談を受けることがありますが、相談を受けた際に、もっと早く相談に来られていればより望ましい結果になったのではないかと思うこともあります。
退職に伴うトラブルの防止のためには、退職以前に適切な対策をしておく必要がありますので、従業員から退職の申出がなされる前であっても、気になることがありましたら、遠慮なく顧問弁護士等の弁護士をご活用ください。

また、従業員の採用前や試用期間中に、採用してよいかどうか、本採用してよいかどうか等の相談を頂くこともあります。このように、早い段階で弁護士に相談して頂くことは、紛争の未然防止、早期解決のために適切ですので、早期の相談をお勧めします。

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