2022年12月20日

消費者契約法の改正について

1 はじめに

令和4年5月25日,消費者契約法の一部を改正する法律が成立し,同年6月1日に公布されました。改正法の施行日は令和5年6月1日とされています。

今回は,消費者契約法とはどんな法律なのか,どのような点が改正されたのか,解説したいと思います。

2 消費者契約法とは

消費者契約法とは,「消費者契約」に関して広く一般的に適用される法律です。

「消費者契約」とは,「消費者」(個人であって,事業として又は事業のために契約の当事者になる者を除きます)と「事業者」(法人その他の団体,及び事業として又は事業のために契約の当事者になる個人)との契約を言います。

消費者契約においては,商品やサービスなどに関する情報は圧倒的に事業者の側にあり,また消費者には契約内容について交渉する余地が事実上ない等,消費者と事業者の間に大きな格差があります。

このように,消費者と事業者との間に格差があることを踏まえて,消費者の利益を守るために制定されたのが,消費者契約法です(なお,労働契約は,消費者契約法の適用対象から除外されています)。

3 消費者契約法の3つの柱と改正内容

消費者契約法には,次の3つの柱があります。

  • 消費者の取消権

事業者の不適切な勧誘行為により,消費者が誤認または困惑して契約を締結した場合,消費者が契約を取り消すことができる権利を定めています。

  • 不当条項の無効

消費者契約における契約条項のうち,消費者の利益を不当に害する条項を無効とすると定めています。

  • 適格消費者団体による差止請求権

事業者の不適切な勧誘行為や不当な条項の使用差し止めを請求する権利を,「適格消費者団体」に認めています。

令和4年改正では,3つの柱それぞれについて改正されましたが,今回は,消費者の取消権,不当条項の無効に関する改正,および事業者の義務の拡充に関する改正について解説します。

4 消費者取消権の追加

消費者取消権については,契約を取り消し得る不当な勧誘行為として,消費者を誤認させる行為と困惑させる行為の2つの類型が規定されています。

令和4年改正では,消費者を困惑させる類型の不当勧誘行為として,以下の3つが規定されました。これらの行為により,消費者が困惑し,それによって契約してしまった場合,消費者は契約を取り消すことができます。

  •  消費者契約の締結について勧誘をすることを告げずに,消費者が退去することが困難な場所に同行して,その場所で消費者契約の締結について勧誘すること(改正消費者契約法4条3項3号)。

従前から,消費者が退去したいと言ったのに退去させてくれない(不退去),退去してほしいと言ったのに事業者が退去してくれない(退去妨害),という内容の不当勧誘行為が規定されていましたが,今回の改正で,退去困難な場所に同行させることも不当勧誘行為に追加されました。

  •  消費者が消費者契約の締結について勧誘を受けている場所で,消費者が消費者契約を締結するかどうかを相談するために電話等する旨の意思を表示したにもかかわらず,威迫する言動を交えて,消費者が電話等で連絡するのを妨害すること(改正消費者契約法4条3項4号)。

従前は,勧誘場所からの退去を妨害することを不当勧誘行為として規制していましたが,今回の改正で,連絡を妨害することも不当な勧誘として規制されることになりました。

  •  消費者契約の締結前に,契約の目的物の現状を変更し,原状回復を著しく困難にすること(改正消費者契約法4条3項9号)。

従前は,契約締結前に,契約した場合に事業者が負うことになる義務の内容を実施することが,不当勧誘行為とされていました(例として,注文を受ける前に自宅の物干し竿の寸法に合わせて竿竹を切断し,代金を請求するような場合が挙げられています〔消費者庁「不当な条項は無効です!-早わかり!消費者契約法」〕)。

今回の改正で,契約しても事業者の義務になるわけではないことを行い,目的物の現状を変更し,原状回復を著しく困難にして契約を勧誘する行為も,不当勧誘行為として規制されることになりました(竿竹屋の例では,注文を受ける前に竿竹に色を塗ること等が,これに当たると考えられます)。

5 無効となる不当条項の追加

令和4年改正により,無効となる不当条項が追加されました。

新たに無効となる不当条項は,事業者の債務不履行または不法行為により消費者に損害が生じた場合に,事業者の責任の一部を免除する旨の規定のうち,軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしないものです(改正消費者契約法8条3項)。

この改正により,例えば,「当社の過失が軽過失の場合は10万円を上限として賠償します」という条項であれば有効となりますが,「法令に反しない限り,10万円を上限として賠償します」という条項や,「法律上許される場合,10万円を上限として賠償します」といった条項は,無効となると考えられます。

これは,責任を限定する範囲が不明確な一部免責条項(いわゆる「サルベージ条項」)を無効とすることで,消費者を保護する趣旨でなされた改正です。

事業者としては,軽過失の場合に賠償責任を一部に限定するのであれば,そのことを契約条項で明記しなければならなくなります。

6 事業者の義務の拡充

今回の改正で,事業者の義務が新たに課されました。新たに事業者に課された義務のうち主なものは,以下のとおりです。

  •  消費者契約の締結について勧誘するに際し消費者に提供すべき情報について,事業者が知ることのできる個々の消費者の年齢・心身の状態・知識及び経験を総合的に考慮するよう努める義務(改正消費者契約法3条1項2号)。
  •  消費者が,定型約款内容の開示請求を行うために必要な情報を提供するよう努める義務(改正消費者契約法3条1項3号。 ただし,消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じているときを除きます)。
  •  消費者の求めに応じて,消費者契約により定められた解約権の行使に関して必要な情報を提供するよう努める義務(改正消費者契約法3条1項4号)。
  •  事業者が消費者に解約料を請求する際,消費者から説明を求められた場合に,解約料の算定根拠の概要を説明するよう努める義務(改正消費者契約法9条2項)。

7 おわりに

令和4年に成立した改正消費者契約法について,主な事項をご説明しました(紙幅の関係で説明を割愛した改正点もあります)。

消費者契約法は頻繁に改正されていますが,事業者としては,改正内容を把握した上で,改正に対応していく必要があります。

改正内容の把握や改正法への対応にお困りのことがあれば,顧問弁護士など,弁護士にご相談ください。

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2022年12月20日 | Posted in お役立ちブログ, その他, 企業法務のお役立ちブログ, 臼井元規の記事一覧 | | Comments Closed 

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