2022年08月08日

残業代請求対応(定時退社の促進と業務効率化)

1 はじめに

前回は,始業時間の適切な管理について解説したところですが,今回は,終業時間の適切な管理について,説明したいと思います。

工場のラインが稼働する時間帯が決まっている製造業や日々の配送ルートが予め定められた運送業のように,業務の内容と業務終了の時刻がはっきりと決められており,業務終了時刻が明らかな業種がある一方で,業務内容が幅広く,仕事に対する裁量が大きい業種,特にホワイトカラーと言われる職種では,定時後に社内に居続けた場合,どの時点で業務が終了したと言えるのかが不明確となりやすいと言えます。

そのため,残業の有無や残業時間の長短について,労使間で紛争が生じないように,適切に労働時間を管理する必要があります。

 

2 労働時間とは何か

まず,これまでのコラムでも述べて来たとおり,労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を言います。

ですが,会社や上司の指示で社内に残って仕事をしているのか,それとも個人的なことをしているのかが分かりにくい場合もあります。

そのため,仕事をせずに,パソコンでネットサーフィンをしていたとか,会社のパソコンや書籍を使って勉強をしていた人がいたとしても,外形上社内におり,退社のタイムカードを押していなかったために,残業をしていたと認定されてしまうリスクがあります。

 

3 残業申請と承認の規則を作る

終業時間を適切に管理するために,まずは,残業と言うのは労働者が自分の判断でするものではないと教えるところから始めなければなりません。残業には許可がいることを労働者に周知する必要があります。

具体的には,残業の際には,残業申請書を提出し,上司の残業承認が必要となることを,労働者に周知徹底します。

また,ルール通り運用されていないというのでは意味がありませんので,実際に,決められた通りに運用する必要があります。労働者が残業をする場合には,毎回,必ず残業申請をさせて,必要な場合に限って上司が承認します。

残業申請をせずに,終業後社内に残っている労働者がいる場合には,残業申請をしてから,残業するように指導をします。労働者が,個人的な理由で,社内に残っている場合には,だらだらと残らずに家に帰るように伝えます。

なお,残業時間が争いになる可能性もありますので,残業申請書とそれに対する承認は,記録として保管しておく必要もあります。

 

4 残業の理由を確認する

残業申請に対する承認についても,残業の理由を確認し,残業の必要性の有無を検討したうえで行う必要があります。

もし,担当している業務の量と質に照らして,必要のない残業申請をしている労働者がいれば,残業許可をせずに,業務時間内に仕事が終わるように,適切な指導をする必要があるでしょう。

一方で,残業申請が続き,どう見ても業務負担が重すぎる労働者に対しては,業務量を減らすことを検討します。

他の労働者や上司が会社に残って仕事をしているから,先に退社するのは気が引けるという労働者がいるかもしれません。

ですが,残業するのが当たり前で,早く帰るのは仕事に真剣に取り組んでいないからだという意識は,早急に改める必要があります。他の労働者が残っていても,残業の必要がなければ,速やかに帰宅することが,労働者のためでもありますし,残業代を負担しなければならない会社のためでもあります。残業申請とそれに対する承認を適切に行うことによって,定時後も会社に残るのが当然という空気を改善することが望ましいでしょう。

労働者が漫然と会社に残り,残業をしているのを見続けるのではなく,残業申請とそれに対する承認と言う手続きを通して,しっかりと労働者の業務量を把握し,マネージメントを行うことが管理職の職務だと言えます。

 

5 ノー残業デーの設置し適切に運用する

企業によっては,ノー残業デーを取り入れているところもあるかもしれません。

毎週水曜日は,社内の全員が,定時退社すると決めて,多くの従業員が,定時退社することによって,残業が当たり前と言う雰囲気を打破し,定時退社が当然だと言う職場環境を生み出すことに繋がることになりますので,残業時間の削減のために,有効な手段だと考えられます。

ただし,ノー残業デーを決めたにもかかわらず,無視して社内に残っている労働者を放置していれば,ノー残業デーが有名無実化してしましますし,ノー残業デーには残業できないから,別の曜日に遅くまで残業している労働者がいるとすれば,その労働者の業務量を適切に調整する必要があります。

単にノー残業デーを決めればいいと言うのではなく,労働者のために,適切に運用されているかどうかに気を配る必要があると思います。

 

6 最後に

残業は労働者に対して,負担をかけるものです。不必要な残業はさせずに,労働者を帰宅させ,プライベートな時間をゆっくりと過ごしてもらうようにしましょう。

そして,限られた労働時間で,きっちりと成果が出るように,各労働者の業務量を調整し,適切な指導をすることが肝要です。

残業時間の管理を通じて,労働者の業務量を把握調整し,各労働者の仕事の効率と生産性が上がれば,労働者にとっても使用者にとっても,満足の行く成果がもたらされると思います。

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2022年08月08日 | Posted in お役立ちブログ, その他, 企業法務のお役立ちブログ, 太田圭一の記事一覧 | | Comments Closed 

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