2020年02月18日

【企業法務】パワハラとは何か?

はじめに

今回から、パワハラについてです。

どのような場合がパワハラに当たるのか、どうしてパワハラが起きるのか、どのような点に気をつければよいのか、などについて、事例を交えながら、ご説明致します。

パワハラとは何か-厚生労働省HPから-

パワハラとは何か。

今さら、という感じもしますが、パワーハラスメントのことです。

パワーハラスメントとは、 職場での優位性や立場を利用して、労働者に対して業務の適正範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え又は職場環境を悪化させる行為 を言います。

厚生労働省は典型例をあげて、次のとおり説明しています。

(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

このうち、(1)は、いわゆる粗暴犯と言われる犯罪ですので、職場の優位性を利用しなくても職場の外でも、逮捕されたり刑事罰に処せられたりする行為です。

(2)も、犯罪になりえますが、(1)が身体的攻撃であるのに対し、こちらは精神的な攻撃を加えるものです。

(3)は、人間関係からの切り離し行為であり、古典的ないじめと言うべき行為です。

(4)は、過大な仕事や遂行不可能なことを強制したりすることです。

(5)は、過小な仕事しか与えず、いわゆる「干す」ことです。この類型の場合は、パワハラかどうか、外部からはわかりにくい場合もあります。

(6)は、私生活などに立ち入ることです。

パワハラはいかなる場合に発生するのか

パワハラになりやすいのが、上司が部下の成績不良や業務上のミスを注意する場面です。

仮に,自分(上司)の言っている内容自体が正しかったとしても、他の従業員が大勢いる前で繰り返し同じ内容を注意したり、人格を否定するような言い方で注意するのは問題です。

このような場面は、いろいろな職場で目にする光景かもしれず、パワハラの問題は、他人事ではなく、多くの人に共通する問題である、と言えます。

しかも、パワハラによって、労働者に、精神的に深い傷を与えてしまうことが珍しくありません。

知らず知らずのうちに、大きな被害を生じさせていることがあります。精神疾患を発症した上、最悪の場合自殺に至ることもあります。

被害が大きいと、後日、高額な損害賠償請求の裁判が起こされるリスクが高くなります。

その場合、会社も、民法715条の不法行為責任(使用者責任)を追及され、 多額の賠償金の支払いを命じられる こともありますから、要注意です。

具体例-JR福知山線脱線事故事件-

多くの犠牲者を出した、JR福知山線脱線事故にも、実は背景にパワハラがあったと言われていますので、紹介します。

2005年4月25日午前9時18分ごろ、福知山線快速電車が塚口駅~尼崎駅間において、右曲線に制限速度70km/hを大幅に超える116km/hで進入し、先頭車両から5両目車両までが脱線、先頭車両と2両目車両が進行方向左側のマンションに衝突しました。

これにより、乗客106名と運転士1名が死亡し、562名の乗客と付近を通行中の1名が負傷しました。

運転士が遅れを取り戻すため、制限速度を超えて運転したことが第一次的な原因ですが、背景にはJRの体質があったと言われています。

というのも、1つは営業施策を優先した度重なる運転時間の短縮により、タイトな列車運行計画になっていたことです。

2つには、JR西日本では、運転技術向上等に効果のない懲罰的な形の「日勤教育」が行われていました。JRグループにおいて、機器取扱誤り・オーバーラン・信号違反などといった事故や、事故に至らない阻害を起こした社員に対して、再発防止を図るためと称して必要な教育が行われており、「日勤教育」と呼ばれています。

しかし、「教育」とは名ばかりで、実態は「見せしめ」や「イジメ」「スパルタ教育」などに近く、ミスを犯した者に肉体的・精神的・経済的な打撃を与える「懲罰」的なものや「暴力」的なものもあったようでした。

内容は毎日、直接的原因と関係ないレポートや作文、就業規則の書き写しのほか、敷地内などの草むしりや車両・トイレ清掃なども行われ、その間の給与も大幅に減額されていました。

列車の遅れを出した運転手が日勤教育になることもあり、これを恐れた運転手が、列車の遅れを取り戻そうとして大幅な速度超過に至ったのではないか、と言われています。

つまりこの件は、上記分類で言うと、(2)(3)(4)の類型に該当する様々なパワハラ的な行為が組織的に繰り返されたことが誘因となって、かかる悲劇が発生した、と見ることもできます。

まとめ

このように、パワハラというのは、私たちの職場で起こりがちであり、かつそれが放置された場合、大変な結果を引き起こすこともありますので、今後、いろいろな事案を交えて、解説して行こうと思っております。

執筆者プロフィール
弁護士 二木克明 >>プロフィール詳細
相続問題と労災事件に注力している。
相続問題は,年間相談件数44件(受任件数40件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
依頼者のお気持ちを大切にすることを心がけている。
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