2023年01月16日

育児介護休業法改正について

1 はじめに
皆様の職場には、育児休業をとっている男性はいらっしゃるでしょうか。
子育てに積極的なイクメンは多いと思うのですが、男性は育休を取りにくいなあと感じている方も少なくないと思います。
私が以前働いていた法律事務所(法テラス)は、男性の育児に理解があり、育休を取得していた男性弁護士もいましたが、弁護士の業界においては、育休をとる男性弁護士は少数派と言えます。

また、弁護士の業界に限らず、世間一般にも、男性の育児休暇取得率は低く、育児は女性の仕事という考えが根強いようですし、出産や育児を機に退職する女性も多くいらっしゃるようです。
そこで、出産や育児による離職を防ぎ、仕事と育児の両立を容易にすべく、育児介護休業法が改正され、令和3年6月9日に公布されました。
今回の改正の目的は、育休を柔軟に取得できるようにして、育児と仕事の両立を支援すること、男性版育休制度を創設し、男性の育児参加を促進することにあります。

2 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の義務化
せっかく、育休の制度があっても、従業員が育休のことを知らず育休の申請をしなかったり、職場全体として男性の育休に対して理解が乏しく育休が取りにくかったりしては、制度が十分に活用されているとは言えないでしょう。
そのため、事業主は、従業員が育休や後述する出生時育児休業(いわゆる産後パパ産休)を取得しやすいように、次のいずれかの措置を講じる必要があります。

① 育児休業・出生時育児休業に関する研修の実施
② 育児休業・出生時育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業と育児休業取得促進に関する方針の周知

従業員に育休の制度を周知するとともに、会社全体として育休取得を促進しているという機運を高めることによって、育休を取得しやすい社内環境ができることが望ましいと思います。
また、事業主は、本人または配偶者の妊娠や出産を申し出た労働者に対して、育児休業制度や育児休業給付に関すること等を周知し、個別に休業の取得意向の確認を行う必要があります。
もちろん、育休取得を促進するための個別周知と意向確認ですので、取得を控えさせる方向での意向確認ではなく、育休取得を歓迎していることが伝わるように行うべきでしょう。

3 有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和
今回の法改正により、育休の取得要件が緩和されています。
従来は、(1)引き続き雇用された期間が1年以上、(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないという2つの要件を満たす必要がありましたが、(1)の要件が撤廃されました。
そのため、就業規則等に、育休取得の要件として、「引き続き雇用された期間が1年以上」と書いている場合は、その規定を削除する必要がありますので、ご注意ください。

4 出生時育児休業(産後パパ育休)の創設
今回の法改正の目玉は、出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)制度の創設だと言えます。
原則として休業の2週間前までに申し出れば、子の出生後8週間以内に4週間まで育休を取得することができます。産後パパ育休という名前で呼ばれているとおり、基本的には、男性が取得できますが、養子を迎える場合には女性でも取得できます。

また、出生時育児休業は、2回に分割して取得することもできますので、例えば出生時から退院時まで取得し、その後仕事を頑張ってこなしてから、再度育休に入るということも可能です。
さらに、労使協定を締結している場合に限りますが、労働者が合意した範囲で出生時育児休業中に就業することも可能です。産まれたばかりの我が子の傍にいたいけれども、担当している仕事が心配で育休取得を躊躇している父親であっても、必要があれば休業中に就業することもできますので、安心して出生時育児休業を取得できます。仕事と育児の両立が一層容易となったと思います。

5 育児休業の分割取得
法改正により、育休を2回に分けて取得することが可能となりました。
夫婦それぞれの仕事の都合に合わせて、育休を分割して取得することによって、従来よりも、仕事と育児の両立が容易になったと考えられます。
また、育休の対象期間は、法改正前と同様に、原則子供が1歳まで、最長2歳までですが、1歳以降の延長について、従来は、育休の開始日を1歳、1歳半の時点に限定していたのを、開始時点を柔軟化しています。これによって、夫婦の仕事の都合や家庭内の都合に合わせて、柔軟に育休を取得することが可能となっています。

6 育児休業取得状況の公表の義務化
令和5年4月1日以降、従業員数1000人超の企業は、年1回、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
公表すべき内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

公表が義務化されたのは、従業員数が1000人超の企業ではありますが、男性の育休取得率が高いということは、仕事と育児の両立ができる働きやすい職場であることの証左でもありますから、男性の育休取得率を積極的に公表し、働きやすい職場であることをアピールするのも良いかもしれません。

7 最後に
今回の法改正によって、男性の育児参加が進み、従業員が柔軟に育休を取得できるようになれば、育児を理由とする離職者が減り、経験を積んだ従業員が長く会社を支えてくれるかもしれません。

育休をとりやすく、仕事と家庭の両立がしやすい職場というのは、従業員の満足度も高く、職場の雰囲気も良く生産性も高いと思いますので、育児休業制度の改正を機に、そのような職場づくりを目指したいものです。
育休制度の構築、就業規則の改訂等、法律家の支援が必要なこともあると思いますので、顧問弁護士等の弁護士に、お気軽にご相談ください。

2023年01月16日 | Posted in その他, 企業法務のお役立ちブログ, 太田圭一の記事一覧 | | Comments Closed 

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