2021年02月19日
試用期間とは何か、試用期間の注意点
試用期間とは
1 はじめに
多くの企業においては,従業員を採用してもすぐに本採用せずに,入社後の一定期間実際に就労させてその仕事にふさわしいか等を評価・判断し,ふさわしくない人を本採用しないとする制度を設けています。
この場合の入社後の一定期間を試用期間といいます。
今回は試用期間について解説したいと思います。
2 試用期間の目的
そもそも,なぜこのような試用期間を設けるのでしょうか。
従業員を一旦雇い入れるとその従業員がその業務にふさわしくないとしても,簡単に解雇できません。しかし,採用の際の採用試験や面接では必ずしもその従業員の人物・能力を測ることができないですし,実際に就労させてみないとその業務にふさわしいかどうか分からないこともあります。そこで,採用試験や面接では知ることのできなかったその従業員の人物・能力,仕事へのふさわしさ等をより正確に判断し,ふさわしくない人を本採用しないために試用期間を設けるようにします。
3 試用期間の法律上の位置付け
試用期間は一般的には解約留保権付労働契約と考えられています。つまり,試用期間満了時にその従業員がふさわしくないと判断された場合には解約(本採用を拒否)する可能性を残した労働契約ということになります。試用期間満了時に本採用を拒否することが無制限に認められるわけではありませんが,通常の雇用契約における解雇の場合よりも広い範囲で認められています。
4 相当な試用期間の長さ
では,試用期間を設けるとして,どれくらいの期間にするのがよいのでしょうか。
一般的には1か月から6か月程度とされることが多く,3か月とされることが最も多いです。試用期間の長さは当事者間の合意で決められますが,この期間があまりに長いと従業員を不安定な地位に長く置くため,公序良俗に反して無効とされることがあります。
一般的に3か月から6か月であれば無効とされる可能性は低いですが,従業員としてふさわしいかどうかを判断するためにどれくらいの期間が必要なのか各企業の実情に応じて決めるべきでしょう。他方で,1年を超えるような場合には無効とされる可能性が高く,無効とされると通常の雇用契約における解雇の場合と同様に厳しく判断されます。
5 試用期間は延長できるのか
当初の試用期間が満了したけれども試用期間を延長したいという場合もあると思います。例えば,実際に就労させたところ,何度も遅刻して従業員としてふさわしくないけれども,遅刻をしないといったその後の本人の反省の態度次第では本採用してもよいと考える場合などです。
試用期間の延長は当事者間の合意で行えると考えますが,従業員の不安定な地位が更に続くことに配慮し,試用期間を延長するためには,就業規則に試用期間を延長する可能性が定められていることと,延長する合理的理由が必要と考えられます。
また,試用期間を延長する場合には,従業員に対して試用期間を延長すると告知する必要があると考えられます。
6 試用期間の注意点
試用期間を設けるにはどのようにすればよいでしょうか。
多くの企業では,就業規則で試用期間を定めていると思いますが,従業員との合意によって試用期間を設けることも可能ですし,その期間を定めることも可能です。もっとも,就業規則で定めた試用期間よりも長い期間については無効になるので注意する必要があります(労働基準法93条,労働契約法12条)。
試用期間中,使用者は何をするべきでしょうか。
試用期間は,採用試験や面接では知ることのできなかったその従業員の仕事のふさわしさ等をより正確に評価・判断し,ふさわしくない人を知るためにあるので,使用者は試用期間に従業員をきちんと評価・判断する必要があります。また,試用期間中の従業員に是正すべき点があれば,十分な教育・指導を行い,改善を促す機会を与える必要があります。
本採用の従業員と大きな違いはあるのでしょうか。
試用期間中の給与を本採用後の給与よりも低額にしている企業があります。最低賃金を下回らないようにする必要はありますが,そのような合意も有効です。
また,試用期間であっても,基本的には本採用後の従業員の労使関係と同様に,各種社会保険の加入要件を満たす場合には従業員を加入させる義務がありますし,法定時間外労働を行った場合には割増賃金を支払う必要があります。
7 おわりに
今回は試用期間について一通り解説してきました。
次回は,どのような場合に試用期間満了時に本採用を拒否できるのか解説したいと思います。
執筆者プロフィール
弁護士 竝木信明 >>プロフィール詳細
1987年茨城県生まれ。
交通事故問題に注力している。
依頼者の話をよく聞いて,その心に寄り添い,不安,悩みを共有し,そして,その方が真に解決したいと思っていることへの適切な解決を提案できるように努めています。
1987年茨城県生まれ。
交通事故問題に注力している。
依頼者の話をよく聞いて,その心に寄り添い,不安,悩みを共有し,そして,その方が真に解決したいと思っていることへの適切な解決を提案できるように努めています。
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