【企業法務】元請けが倒産!工事代金未払いの対処法
ご相談の内容
「大型ビル建築工事の下請けとして内装工事を受注していましたが,
工事の途中で元請会社が民事再生を申し立てました。
元請会社の弁護士から工事の続行を求められていますが,
工事代金の支払いについて無理な要求をされています。
民事再生申立の後の工事部分は代金を全額支払うが,
申立前の出来高部分については,再生債権として民事再生の手続きの中で債権額をカットして長期の分割弁済にするという説明でした。
90%以上をカットすることになると聞いており,
当社としてはとても受け入れられませんが,
他社は渋々同意書にサインしていると聞きます。
どのように対処すればよいでしょうか。」
という相談がありました。
解決への道筋
双方未履行の双務契約
建設会社の倒産でよくある事例です。
工事が途中で代金も支払われていないケースについては「双方未履行の双務契約」として民事再生法に49条に特別の規定が置かれています。
再生債務者は,下請会社に対して履行を請求することもできるし,契約の解除をすることもできます。
そして,工事の履行を選択した場合には,工事代金は再生債権ではなく共益債権として全額支払うこととされています。
問題は共益債権になるのが申立後の工事代金だけなのか,申立前の工事代金も含むのかという点です。
双方未履行の双務契約に関しては,学説が多数ありますが,後者の立場の判例も存在します。
裁判で回収
弊所では下請け会社から委任を受け,元請け会社に対して,申立前の工事代金を共益債権として裁判で全額の支払いを請求しました。
裁判官が間に入って,ほぼ満額に近い金額を支払ってもらう和解が成立しました。
1年近くかかりましたが,依頼者は十分満足しておられました。
倒産事件は特殊
倒産事件は特殊な分野であり,判例や学説が錯綜しています。
対応を間違えてしまうと,数千万円規模の損失になることもあります。
できるだけ早い段階で倒産事件に詳しい弁護士に相談することが大切だと思います。
30年以上に渡って,企業からの様々な相談を受けている。
顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。