2017年06月01日

【相続問題】妹が遺産の1/3を要求!不動産相続の問題を解決

ご相談の内容

ある資産家(Aさん)から相談を受けました。Aさんは3人姉妹の長女でした。Aさんからのご相談内容は下記の様なものでした。

「10年前に父が亡くなりました。その資産(ほとんど不動産です)の大半を母の名義にし、以後、高齢の母を助けて、残された不動産を管理して来ました。更地のままだと固定資産税が高くなるだけでなく、母の相続の時、相続税が高くなるので、税金対策として、借金をして、それでアパートを建てて、管理をして、頑張って来ました。

管理は大変でした。掃除などもしなければいけませんし、古くなったら修理も必要です。空室が出ると、新しい人を募集しなければなりません。また一方で、賃料を滞納する人がいると、その取り立てをしなければならず、苦労が絶えませんでした。それでも親のためと思って頑張って来ました。

そしてこのたび、母が亡くなりました。そこで私は、これまで管理に大変だったので、基本的には全部このまま相続したいと思っています。
ところが妹2人は、それぞれ、遺産全体の3分の1ずつを要求して譲りません。どうしたらよいでしょうか。」

解決への道すじ

そこでまず、民法の原則では、相続人は3人いて、1人3分の1ずつしかもらえないことになっていること、ただ、生前に財産の維持や増加に貢献した人は、その分を金銭に換算して、それだけ余分に貰うことができることを説明しました。これを寄与分と言います。

聞くと、お父さんが亡くなった時点で、土地が3億円、預貯金は3000万円、借金はなし、これを全部お母さんが相続することで処理した、とのことでした。その後、2億円の借金をして2億3000万円のアパートを建てました。その頭金に貯金3000万円は使いました。以後経営に頑張ったことで、現在、借金はまだ1億円あるものの、預貯金が9000万円となり、アパートの評価は1億円で、土地は3億円で変わらない、とのことでした。

そうしますと、現在の遺産は、合計4億9000万円で、借金を引いても、3億9000万円の純資産が残されたことになりますので、遺産は6000万円増えたことになります。この分はまさにAさんの貢献によるものですので、6000万円を寄与分として認めてもらい、残り3億3000万円を3人で3等分する、ということを提案しました。

それで話し合いをしてみたのです。ところが全く相手は話に応じませんでした。それでまたAさんは、どうしたものか、と相談に来られたのです。

そこで、遺産分割の調停を起こすことにしました。この場合、裁判所の調停委員が中に入って話しをまとめるように尽力してくれます。調停では話がつくまで1月の1回くらいのペースで開かれます。それから先はケースバイケースですが、数回の調停で話がつくことが多いのです。ざっと半年から1年くらいが目安です。

ところが調停でも話がつかない場合もあります。そんな時は、そのまま審判に移行してもらいます。そしてその審判では、証拠の取り調べを行い、裁判官が強制的に分け方を決めてくれますので、必ず解決までこぎ着けることができます。かかる期間としては、審判になってから、ざっと、半年から1年くらいが目安です。

その件では、調停を起こしてから終わるまでに1年ほどかかりましたが、何とか調停で決着をつけることができました。Aさんは1億円の借金を引き継ぐ代わりに、資産も、2億7000万円程度を貰うことができました。妹2人にも、1人1億1000万円相当の物を渡し、何とか決着が着きました。

執筆者プロフィール
弁護士 二木克明 >>プロフィール詳細
相続問題と労災事件に注力している。
相続問題は,年間相談件数44件(受任件数40件)(※直近1年間)の豊富な経験を持つ。
依頼者のお気持ちを大切にすることを心がけている。
2017年06月01日 | Posted in 【個人】相続問題, 二木克明の記事一覧, 個人の解決事例, 全記事 | タグ: , , Comments Closed 

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