【お役立ちブログ】公益通報者保護法の改正について
1 はじめに
公益通報者保護法とは、企業の不祥事による被害拡大を防止するための内部通報について、 通報者の保護に関するルールを定めた法律 です。
公益通報者保護法が作られたのは、平成18年のことでした。企業の不祥事が大きな社会問題となってきたため、不祥事をより早期に発見して、被害を防止するために、内部通報者が安心して通報できるよう、通報者が保護を受けられるような制度が作られることとなったものです。
法律の主な内容としては、 通報したことを理由とする解雇や不利益な取り扱いの禁止 といったことが定められています。
令和7年6月4日 、公益通報者保護法の一部改正法案が国会にて可決・成立しました。 改正法は令和8年12月1日から施行されます。改正の内容は以下の項目で、近年の事業者の公益通報への対応状況及び公益通報者の保護を巡る国内外の動向に鑑みた改正と言われています。
- ① 事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
- ② 公益通報者の範囲拡大
- ③ 公益通報を阻害する要因への対処
- ④ 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済を強化するための措置
以下、概要を解説します。
2 公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底、実効性の向上
- ⑴ 従事者指定義務違反に対する監督権限・罰則の強化
公益通報者保護法では、 常時使用する労働者が300人を超える事業者 に、 公益通報対応業務従事者 (以下、「従事者」といいます)を指定することが義務づけられています(公益通報者保護法第11条1項。なお、常時使用する労働者が300人以下の事業者については、従事者の指定は 努力義務 とされています)。
この従事者指定義務に違反する事業者(常時使用する労働者の数が300人超に限ります)に対して、現行法では、国が必要に応じて指導や助言、勧告をすることができるとされています(公益通報者保護法第15条)。
改正法では、以下の強力な規定が新設・変更されました。
ア 指導、助言、勧告に加え、勧告に従わない場合に 国が命令する権限 を与え、その命令に違反した場合に 刑事罰(30万円以下の罰金)に処する規定 が新設されました(改正公益通報者保護法第15条の2)。
イ 新たに 立入検査権限を新設 するとともに(改正公益通報者保護法16条)、 報告の懈怠や虚偽報告、検査拒否 に対して 刑事罰(30万円以下の罰金) を科し得る規定が新設されました(改正公益通報者保護法第21条の2)。
- ⑵ 労働者等に対する公益通報体制の周知義務の明示
現行法では、事業者は、公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならないとされています(公益通報者保護法第11条2項)。
改正法では、公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備の一環として、 労働者等に対して公益通報対応体制を周知する義務 があることが明示されました(改正公益通報者保護法第11条2項)。
3 公益通報者の範囲拡大
公益通報者として保護の対象となる者は、従来は、労働者(正社員のみならず、アルバイト、パートタイマー、派遣労働者を含みます)、退職者、役員等とされており(公益通報者保護法2条1項)、 事業者と業務委託関係にあるフリーランスは、公益通報者とはされていませんでした。
近年、フリーランスを起用する企業が増えてきているところ、フリーランスが公益通報者として保護されないため、フリーランスが公益通報を躊躇せざるを得ないといった事態が生じているとの指摘がなされていました。
今回の改正で、 事業者と業務委託関係にあるフリーランス及び業務委託関係が終了してから1年以内のフリーランス が、公益通報者に追加されました(改正公益通報者保護法第2条1項3号。フリーランスの定義は、いわゆるフリーランス法[特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律]第2条を引用して規定されています)。
この改正により、事業者と業務委託関係にあるフリーランスに対する、以下の行為(不利益な取り扱い)が 厳格に禁止 されます。
・公益通報を理由とする 業務委託契約の解除 ・ 取引の数量の削減 ・ 取引の停止 ・ 報酬の減額 ・その他の不利益な取り扱い
4 公益通報を阻害する要因への対処
改正により、事業者が公益通報を阻害することを防ぐための規定が新設されます。
ア 事業者が労働者等に対して、正当な理由がなく、 公益通報をしない旨の合意を求めること 、公益通報をした場合に不利益な取り扱いをすることを告げることその他の行為によって、 公益通報を妨げてはならない との規定が設けられました(改正公益通報者保護法第11条の2第1項)。
※この規定に違反してされた合意その他の法律行為は すべて無効 となります(改正公益通報者保護法第11条の2第2項)。
イ 事業者は、正当な理由なく、 公益通報者を特定することを目的とする行為 (例えば、労働者等に対して公益通報者であることを明らかにするよう要求すること等)をしてはならないとの規定も設けられました(改正公益通報者保護法第11条の3)。
5 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済を強化するための措置
現行の公益通報者保護法においても、公益通報をしたことを理由とする労働者等の解雇を無効としたり(公益通報者保護法第3条。ただし、一定の要件を満たす必要があります)、公益通報をしたことを理由に降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならないという規定があります(公益通報者保護法第5条)。
今回の改正で、公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済を強化するための規定が設けられました。
■ 公益通報後1年以内の解雇等の推定規定の新設(改正公益通報者保護法第3条3項)
公益通報後1年以内にされた解雇又は懲戒処分は、公益通報を理由としてされたものと推定 するとの規定が新設されました。これにより、例えば、解雇の効力を争う民事訴訟において、公益通報後1年以内に解雇がされていれば、 事業者が積極的に、解雇が公益通報を理由とするものではないと証明 しなければ、裁判所は、公益通報を理由とする解雇であると判断し、 解雇を無効とする判決 を下すことになります。
■ 直罰規定の新設(改正公益通報者保護法第21条1項)
公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 を科し得るという規定が設けられました(行政指導を介さず直接刑事罰を科す規定で、 「直罰規定」 と言われます)。
6 おわりに
今回は、公益通報者保護法の改正についてご説明しました。
公益通報者保護法は、改正前からの法律の内容を含めて難しく、判断に迷うところが多々あると思います。また、社内の窓口だけでなく、 会社から独立した通報窓口の設置が推奨 されており、 弁護士を窓口とすることも多くあります。
通報者保護の体制の整備をお考えの方や、通報に関するトラブルがあれば、 まずは顧問弁護士などの弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士 臼井元規 >>プロフィール詳細1990年愛知県生まれ。
交通事故に注力している。
『被害に遭った方の気持ちに寄り添う』ことをモットーとしており、
適切なスピード感を持って,相談者の悩みに誠実に応えるようにしている。









