2020年04月13日

【新型コロナウイルス】従業員を休ませる場合、給料は?

従業員を休ませた場合、給料の支払いはどうすれば?

新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な影響が出ています。

そこで、従業員を休ませた場合の給料などの問題について、Q&A形式で解説してきたいと思います。

Q1 新型コロナウイルスに感染した従業員を休ませた場合、給料はどうするのでしょうか?
従業員が新型コロナウイルスに感染している可能性があるが休ませていいのでしょうか?その場合給料を払う必要があるのでしょうか?
仕事がないため店や工場を閉めたいが、従業員の給料はどうすればいいのでしょうか?

A1 このような問題について、どのように対応すればいいのかについて、法律の原則論を知っておく必要があります。

まず、使用者と従業員との間では、雇用契約、労働契約が成立しています。そこで、従業員は、使用者のために働く義務があります。一方で、使用者は、仕事をした労働者に対して、給料を支払う義務があります。

そうすると、労働者が使用者のために、働かなかった場合、給料を支払う必要はありません。これを、ノーワークノーペイの原則と言います。

Q2 そうすると、理由はどうであれ、従業員が休んだ場合、使用者はお給料を払わなくていいんですね?

A2 そういう訳にはいきません。

民法536条2項によると、従業員が働けなかったことについて、使用者に責任があるときには、使用者は、従業員に対して給料を支払わなくてはなりません。

例えば、使用者が、違法なロックアウトにより、従業員の就労を拒否した場合には、従業員に対して、給料の全額を支払う必要があります。

Q3 そういえば、使用者の都合で、仕事が休みになった場合、休業手当を払ってもらえると聞いたことがあるのですが、それは本当なのですか?

A3 そのとおりです。

労働基準法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。

そうすると、使用者の都合による休業の場合は、労働者が働かなくても、平均賃金の6割以上の休業手当を払わないといけないのです。

Q4 ちょっと分からなくなってきたので、質問していいですか。
先ほどの民法536条2項も労働基準法26条も「責めに帰すべき事由」という言葉がありましたが、これって、同じ内容なんですか?

A4 いいえ、違います。

確かに、「責に帰すべき事由」という言葉は共通しています。

ただし、その意味が違っていることに注意しなければなりません。

民法536条2項の「責に帰すべき事由」よりも、労働基準法26条の「責に帰すべき事由」の方が広い意味だとされています。

Q5 なるほど。具体的には、どのような違いがあるのですか?

A5 民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」とは、債権者の故意・過失または信義則上これと同視すべき場合とされています。

これに対して、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、より広く、使用者側に起因する経営・管理上の障害も含むとされています。

例えば、親工場の経営難のために、下請け工場が資材や資金の確保ができず休業した場合であっても、使用者の責に帰すべき事由があるとして、平均賃金の6割以上の休業手当を払わなければならないとされてしまう可能性が高いのです。

Q6 それと、不可抗力による休業の場合は、給料どころか休業手当も払わなくていいんですよね。

Q6 はい、そうです。

Q7 どういった場合に不可抗力と言えるのですか?

A7 簡単に、不可抗力とはなりません。

不可抗力と言えるためには、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、及び②使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けることができない事故であることの2つの要件を満たさなければなりません。

Q8 最後に、今回のまとめをお願いします。

A8 今回は、少し小難しい話になりましたが、法律の規定、原理原則論を紹介しました。
次回以降、個別具体的な問題について、掘り下げて検討したいと思います。

 

執筆者プロフィール
弁護士紹介|太田 圭一弁護士 太田圭一 >>プロフィール詳細
1981年滋賀県生まれ。
離婚問題や相続問題に注力している。
悩みながら法律事務所を訪れる方の、悩み苦しみに共感し、その思いを受け止められるように努めています。

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