2023年01月20日

道路交通法改正(アルコールチェック義務規定の拡充等)について

1 はじめに
昨今,飲酒運転者に対する罰則や飲酒運転の取り締まりが強化されています。
しかしながら,飲酒運転車両による事故が発生し,被害者が犠牲になる事案は,後を絶ちません。
この度,飲酒運転の取り締まり強化の趣旨で,道路交通法(施行規則)が改正されました。すでに一部の改正内容は,令和4年4月1日から施行されています(一部の内容については,本原稿を執筆している令和5年1月時点で,施行時期が決まっていません)。
今回は,この道路交通法改正について,解説します。

2 改正の概要
今回の改正の概要は,以下のとおりです。
① 「安全運転管理者」を設置する義務のある事業所において,次の②~④のことが義務化されました。
②  運転前後の運転者に対し,運転者の状態を目視等で確認して運転者の酒気帯びの有無を確認しすること
③  運転前後の運転者に対し,アルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認すること
④  ②と③の確認結果を記録し,1年間,保管すること
①~④のそれぞれについて,詳しく解説します。

3 「安全運転管理者」とは
今回の道路交通法改正の対象となるのは,「安全運転管理者」を設置する義務のある事業所です。
「安全運転管理者」とは,自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として一定の場合に設置が義務付けられるもので,設置が義務付けられるのは,次のいずれかの条件に該当する事業所です。
ア 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所
イ 乗車定員10人以下の自動車を5台以上使用する事業所
また,20台以上の自動車を使用する事業所は,「副安全運転管理者」も設置する必要があります。「副安全運転管理者」は,安全運転管理者の補助業務などを担当する者で,使用自動車数が20~39台の場合は1名,40台以上の場合には20台ごとに1人追加する必要があります。
「安全運転管理者」の義務として,上記2で述べた②目視等で運転者の状態を確認する,③アルコール検知器を使って運転者の状態を確認する,④確認した結果の記録・保存が追加されました。

ちなみに,「安全運転管理者」は,一定の大きさや数の「自家用自動車」を使用する事業所に設置される者で,「事業用自動車」を使用する事業所には,「運行管理者」が設置されます。
運転前後の飲酒の有無の確認については,「運行管理者」にはすでに義務付けられていました。つまり,今回の改正で,「事業用自動車」を使用する事業所について義務付けられていたものが,「自家用自動車」を使用する事業所に拡大されたということになります。
なお,「事業用自動車」とは,お金をもらって人や物を運送する車のことで,タクシーなどがこれに当たります。「自家用自動車」とは,事業用自動車以外の車で,例えば,営業車や社用車が該当します。

4 目視等による飲酒の有無の確認
安全運転管理者は,運転前後の運転者に対し,運転者の状態を目視等で確認することにより,その運転者の酒気帯びの有無を確認しなければなりません。
これは,個々の運転の直前や直後にその都度行う必要はなく,例えば,出勤時と退勤時に行えば足ります。

「目視等で確認」とは,運転者の顔色,呼気の臭い,応答の声の調子等で確認することを言います。
原則としては対面で行う必要がありますが,例えば自宅から出張先に直行したり,出張先から自宅に直帰する場合などは,ビデオ通話などで運転者と通話し,運転者の顔色,応答の声の調子等を確認することとなります。
この改正内容は,令和4年4月1日から施行されています。

5 アルコール検知器を用いた確認
安全運転管理者の運転前後の運転者に対する飲酒確認は,先ほど述べた「目視等」による方法に加えて,アルコール検知器を用いて行う必要があります。
アルコール検知器については,酒気帯びの有無を音,色,数値等により確認できるものであれば足り,特段の性能上の要件は問われません。

運転者が自宅から出張先に直行したり,出張先から自宅に直帰したりする場合などは,携帯型のアルコール検知器を運転者に携行させた上で,運転者とビデオ通話をしてアルコール検知器による測定結果を確認する,運転者と電話をしてアルコール検知器による測定結果を報告させる,といった方法で確認します。

このアルコール検知器による飲酒の有無の確認義務規定については,現時点(本原稿執筆中の令和5年1月時点)で,まだ施行時期が決まっていません。当初は,令和4年10月1日から施行される予定でしたが,半導体の供給不足によりアルコール検知器を十分に確保できる見通しが立たない等の理由で,施行が延期され,施行時期が決まっていない状況です。

6 検査結果の記録・保管義務
安全運転管理者は,目視等による飲酒の有無の確認を行う際,これらを記録し,その記録を1年間,保管しなければなりません。記録すべき事項は,確認者名・運転者名・確認の日時・確認の方法(アルコール検知器の使用の有無,対面でない場合の具体的な確認方法など)・酒気帯びの有無などです。

これらの確認記録・保管義務の規定は,令和4年4月1日から施行されています。ただし,アルコール検知器の使用の有無に関する事項を記録・保管する義務規定は,アルコール検知器による確認義務規定の施行延期に併せて,施行が延期されています。

7 違反に対する罰則
飲酒の有無の確認義務や記録・保管義務に違反しても,そのことを理由として罰則が科されることはありません。もっとも,飲酒の有無の確認の不実施や不適切な実施が公安委員会に判明した場合,使用者と運転管理者は,公安委員会から必要な報告や資料提出を求められる可能性があります。

なお,安全運転管理者・副安全運転管理者を設置しなければならない事業所が,これらの選任を怠っていた場合,使用者と法人の両方に50万円以下の罰金が科されることがあります。

8 終わりに
運転者に対する飲酒の有無の確認義務に関する改正法について,解説してきました。
今回の改正の対象となる事業所においては,運転者に対する飲酒の有無の確認や記録などを確実に行わなければなりません。また,施行時期の決まっていないアルコール検知器による確認についても,いずれは施行されますので,今から対応の準備をする必要があります。
改正法の対応でお困りのことがあれば,顧問弁護士などの弁護士にご相談下さい。

企業法務に関する無料資料

関連記事