2018年12月10日

コンプライアンスの違反事例(会社トップによる不正行為)

コンプライアンスの違反事例
「東芝不正会計処理事件」

2008年のリーマンショックの後,世界的な景気悪化により
東芝の売り上げが激減し,過去最悪となる3435億円の赤字に陥ったのです。

この頃から業績を上げるよう社長が部下たちに強く迫るようになりました。

そこで行われた不正の方法は、次のようなものです。

決算直前に、パソコンの製造を委託している会社に
高値で部品を買ってもらい、一時的に利益を確保します。

そして,決算後に完成品を高値で買い戻し、損失が発生します。

再び決算前になると部品を高値で売るという見せかけの利益を計上していたのです。

この方法は「押しこみ」と呼ばれていました。

証券取引等監視委員会はこれらの不正を有価証券報告書の虚偽記載と認定し,2015年に約74億円の課徴金を課しました。

このような不正会計の背景にはアメリカ原発事業の巨額損失があり,2017年3月期の決算で東芝は約6500億円の損失を計上しました。

証券取引等監視委員会は,この損失は2016年3月期に計上すべきであったと指摘し,監査法人も同様の見解に立って「限定付き適正意見」を出しました。

その結果,東芝は有価証券報告書を2ヶ月遅れの2017年8月に
提出することとなりました。

しかし,その後も証券取引等監視委員会の調査は続いています。
東芝は,1万4千人規模の人員を削減し,医療機器子会社の東芝メディカルシステムズがキヤノンに売却されて,債務超過を回避しました。

コンプライアンスの違反事例
「奥能登談合事件」

2011年10月,公正取引委員会は、石川県と輪島市が発注する公共工事で談合を繰り返していたとして、奥能登2市2町に本社を置く68社の建設業者に再発防止を求める排除措置命令を出し,51社に対し課徴金合計約6億7000万円を課しました。

工事契約には違約金条項も入っており,多額の違約金を支払うこととなり,業者の中には倒産や廃業に至るものも現れました。

コンプライアンス違反への対策

会社トップが自ら不正に関わったり,不正を指示するというケースでは,対策が困難です。トップを押さえる人がいないからです。

上場企業の場合は,指名委員会が社長の人事権を持っていますから,指名委員会にコンプライアンス関連情報が報告されれば,社長の解任も可能であり,その意味で監視機能も期待されます。

指名委員会を設置していない多くの会社では,企業理念の徹底しかないと言えます。

しかし,過去にも談合事件が発覚し談合決別宣言をしたはずのゼネコンが談合を繰り返すという歴史を見ていると簡単なわけにはいかないと思われます。

業界の構造的な問題が存在しており,
その解決がされない限り続いていくかもしれません。

社長がコンプライアンス違反を指示するような会社は,
やがて社会が閉め出すことになります。

また,会社を見限って従業員が退職していき,自ら瓦解することも少なくありません。

会社経営では事業の継続性がもっとも大切であり,そのためにはコンプライアンス経営が必須ですので,社長の意識改革を求めたいと思います。

 

 

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1. ≫コンプライアンスとは「コンプライアンスの意味と概要」

2. ≫コンプライアンスの違反事例(個人的な利益を目的としたケース)

3. ≫コンプライアンスの違反事例(不正の黙認など会社の体質によるもの)

4. ≫コンプライアンスの違反事例(自覚が少ない不正行為)

5.〈当記事〉コンプライアンスの違反事例(会社トップによる不正行為)

執筆者プロフィール
弁護士紹介|森岡 真一(副所長)弁護士 小堀秀行 >>プロフィール詳細
30年以上に渡って,企業からの様々な相談を受けている。
顧客対応やクレーム処理,債権回収など,時代によって対応に変化が必要であり,最近はSNSなどを意識した対応に心がけている。

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